さいたま市内の美園地区で検討されていた順天堂大医学部の新病院開院計画をめぐり、順天堂大学は29日、代田浩之学長が埼玉県庁を訪れ、大野元裕知事に計画中止を報告した。
県保健医療政策課によると、代田学長は「建設費の高騰、医療機関を取り巻く状況変化があり、実現は困難となった」と述べた。一方、大野知事は大学側に遺憾の意を伝えるとともに、現在実施している県内の病院への医師派遣については引き続き協力を求めたという。
新病院建設をめぐっては、県は平成26年、県北や秩父などの医師が不足する地域に医師を派遣するなどを条件に、さいたま市内で800床の病院整備計画を公募。27年の県医療審議会で、順天堂大が令和2年度開院予定で付属病院を設置する計画が採択された。
ただ、当初の計画から大幅に遅れ、9年11月に開院する予定に延期。この間に、当初約400億円の見込みだった整備費が、資材高騰などで約1400億円と膨らんでいた。
今回の順大側の発表によると、建築業界の急激な需要増や資材の高騰に加え、「深刻な人手不足などの要因も重なり建築費が大幅に高騰した」という。また、総事業費が当初平成27年に予想した規模の2・6倍にあたる2186億円に達することが明らかになったとしている。
また、計画中止の理由については、新型コロナウイルスの流行による病院運営への負の影響、先進的な医薬品・診療材料の価格高騰などが原因で厳しい財政状況に直面しており、開院準備資金の確保、開設後の運営資金の捻出することが難しい事態となっていることを挙げている。