Infoseek 楽天

Ⅰ期小細胞肺がんと間質性肺炎の症状がある70代 術後の化学療法はどうすれば? がん電話相談から

産経ニュース 2024年10月8日 9時0分

今回の「がん電話相談」は、間質性肺炎の症状があり、Ⅰ期の小細胞肺がんの術後の化学療法について悩む70代男性に、がん研有明病院呼吸器センター長、西尾誠人医師が答えます。

--平成22年に間質性肺炎と診断され、都内の病院で経過観察しています。今年3月、エックス線検査で左肺の上葉に影が見つかり、2カ月後に肺葉切除術を受けました。組織型は患者数が圧倒的に多い非小細胞肺がんではなく、増殖が速く、転移しやすいとされる小細胞肺がんで、N0(リンパ節転移なし)、T1C(がんの最大径3センチ大)のやや進んだⅠ期(ⅠA3期)の診断でした。

「術後の治療は?」

--限局型の小細胞肺がんは術後補助化学療法も行うとのことですが、私の場合、間質性肺炎が急性増悪しやすいため難しいと言われ、がんについても(相談時点で)約3カ月間、無治療、経過観察中です。ただ、がんの増殖や転移が心配です。最近、担当医からも抗がん剤治療を打診され、迷っています。

「治療の選択はリスクとベネフィット(治療効果)を考えることになります。間質性肺炎が急性増悪して死に至るリスクと、がんが再発して悪くなり致命的になるリスクのどちらが高いかを、ある程度予測しながら方針を立てます。相談者が間質性肺炎と診断されたのは14年前で、お話から判断して進行度は中程度から少し低めという気がします。また小細胞がんは一般的に予後が悪く、再発しやすいといわれ、1カ月程度で目に見えて腫瘍が大きくなることがありますが、術後約3カ月無治療ということは、比較的穏やかながんだとの印象です」

「小細胞肺がんは1年以内の再発確率が約50%。1年間、再発がない場合はさらに確率が下がるといわれます。まだ術後約3カ月だと、再発は予断を許しません。一方、間質性肺炎の急性増悪による命のリスクは術後と今とで、それほど変わりません。がんは再発すると致命的になる可能性があります。再発した場合は間質性肺炎の急性増悪リスクを度外視し、化学療法を行うことになります」

--その場合の薬は。

「細胞障害性抗がん剤のエトポシド(商品名ラステット)に、シスプラチン(ランダ)を併用するPE療法か、カルボプラチン(パラプラチン)併用のCE療法のどちらかです。小細胞肺がんに分子標的薬は基本的に合いません。喫煙歴がある人に発症が多く、その場合、すでに遺伝子に多くの傷がついている可能性が高いためです。また免疫チェックポイント阻害薬も代表的な副作用に間質性肺炎があり、適しません」

--実は肺機能の悪化を抑制するピレスパという錠剤を飲んでいます。

「ピレスパは間質性肺炎が少しずつ悪くなることや急性増悪を予防するために服用しているのでしょう。がん研究会では、ピレスパ服用中の患者に化学療法を勧めません。現時点の状況では、間質性肺炎の急性増悪のほうが、がんの再発リスクより高いと判断することが多いからです。今、化学療法を無理してやることはない、というのが一般的な考え方でしょう」

「簡単に答えが出ることではありません。双方のリスクを勘案しながら主治医とよく相談し、どちらがより心配かを考えて今後の治療方針を決めてください」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。10月14日(スポーツの日)は休みます。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

この記事の関連ニュース