Infoseek 楽天

肺がんの術後治療で副作用、転移は心配だけど苦しいのは嫌 今後の治療法は? がん電話相談から

産経ニュース 2025年1月14日 9時10分

今回の「がん電話相談」は、膵臓(すいぞう)がんの経過観察中に肺がんが判明した70代女性からの相談です。膵臓からの転移ではなかったものの、手術で取り切れなかったといいます。がん研有明病院呼吸器センター長、西尾誠人医師が答えます。

--令和4年5月に膵臓がんと診断され、その年の8月に手術しました。その後は経過観察で、再発もなく安定していましたが、6年4月に検診のPET-CTで左肺にすりガラス状の影があると診断。6月に気管支鏡検査で左上葉の非小細胞がんと分かり、胸腔鏡補助下手術で左上葉を切除(肺葉切除術)しました。がんは長径34ミリで、検査で非小細胞肺がんに特有のEGFR遺伝子変異が陽性だったので、膵臓がんの転移ではないと言われました。ただリンパ節転移を取り切れなかったと聞きました。

病気を理解することが必要

「術後の治療は?」

--EGFR遺伝子の変異陽性の非小細胞がんに効果があるという分子標的薬で錠剤のタグリッソ(一般名オシメルチニブ)を7月から80ミリグラムで服用しました。ところが1カ月で日常生活に支障が出るほどの体調不良になり、休薬。9月から40ミリグラムに減量し、再開しました。膵臓がんの治療では抗がん剤の副作用に悩みました。転移は心配だけれど、副作用で苦しいのも嫌です。どうすべきでしょうか。

「まず病気を理解することが必要です。治療の選択は病気の進行状況や体の状態によって変わります。膵臓がんは落ち着いているので、そのまま経過観察でいいでしょう。肺がんは、PET-CTの画像を見ていないので正確には言えませんが、すりガラス状の影だとされた時点で膵臓がんの転移ではなく、肺に別のがんができたということになります」

--放射線療法の一つ、重粒子線治療は?

「手術後の病理診断で、リンパ節に目に見えないようながん細胞が見つかった状況を踏まえて再発防止を目指した治療をどうするかです。選択肢は、重粒子線などの放射線療法▽もう一度手術をする▽抗がん剤などの薬物療法-のいずれかになるでしょう。放射線による局所治療は、がんのある部位を確定できなければ適応となりません。手術だとリンパ節自体は切除できますが、すでにリンパ液によりがん細胞が他の臓器に広がっている可能性があり、そちらには効果がありません。一方、全身治療の薬物療法のほうが、がんの再発を抑制できる可能性は高まります」

タグリッソで再発抑制を

「あとは副作用とのバランスになるでしょう。一般的な抗がん剤とは違い、分子標的薬のタグリッソはがん細胞だけを狙い撃つので、副作用が比較的少ない。現在やるべき治療の目的はできるだけ再発を抑制することなので、タグリッソが一番いいでしょう。発疹や皮膚乾燥、下痢などの副作用があるので、バランスを見ながら薬の量を調整しつつ、服用期間である3年間続けるのが今やるベストです」

--より効果のある80ミリグラムに戻すのはありですか。

「無理して増やすよりも継続することが大事です。休薬すれば再発の可能性はあります。主治医は副作用の状況も分かっていると思うので相談してください」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

この記事の関連ニュース