東京科学大病院は19日、心臓の移植医療に参入するため、来年1月1日に移植医療部を新設すると発表した。すでに臓器提供施設として実績はあるが、移植医療も担うべく来年中に認定申請し、早ければ令和8年4月から移植手術が行えるよう準備を進める。移植希望者の待機期間が長期化する中、移植医療体制の逼迫の解消につなげる。
現在、国内の心臓移植施設は、東京大や大阪大の医学部付属病院など全国12施設。東京科学大病院は移植医療部の中に臓器提供と移植の2つの部門を設け、計12人のメンバーで年間12例の心臓移植の実施を目標とし、翌年から24例に拡充する方針という。
移植医療部の設立に先立ち、臓器移植に必要な看護を学ぶため、すでに看護部が東京大や国立循環器病研究センターで研修するなどしている。移植実施施設として認定を受けるには、一般社団法人「日本循環器学会」などでつくる協議会に申請し、施設の審査などを受ける必要がある。
心臓移植の希望者は、11月末時点で824人に上り、実際に移植を受けることができる人は年間100人前後にとどまり、待期期間は平均5年。ただ、東京大など一部の移植実施施設に手術が集中し、施設側の集中治療室(ICU)不足などを理由に手術が見送られる事態も起きている。
19日に都内で開かれた記者会見で、東京科学大病院心臓血管外科教授で移植医療部部長、藤田知之氏は「連携を深めて、東京大の負担を取っていく必要がある。国立大として一翼を担っていきたい」と語った。