特に受験期は、悩みの種となる生理。生理痛がつらくても適切に対処できず、インターネット上の相談欄には女子受験生が悩みを寄せているという。入試シーズンに入ったいま、保護者は娘の生理の悩みに、どんな支援ができるだろう。専門家のアドバイスをまとめた。
相談しづらく、母にも不安伝わらず
「受験勉強に身が入らないほど生理痛がつらいが、母親に相談したら産婦人科に行くほどではないと言われた」
10代向け性教育ウェブメディア「セイシル」の相談コーナーに寄せられた女子受験生の声だ。
「受験生に限らないが、生理について悩みを保護者に相談しづらいと感じる女子生徒は少なくない」。そう語るのは、セイシルを運営するTENGAヘルスケア(東京)の福田真央さん。中には、生理痛を和らげるため鎮痛剤を服用したくても保護者に許可してもらえない、との悩みも寄せられるという。
親の思い込みや情報不足などにより、子供たちが適切な「生理ケア」にたどり着けないことを〝親ブロック〟とも呼ぶそうだ。
生理を巡る不安について女子受験生と母親に意識ギャップがあることは、民間企業の調査でも明らかになっている。
ユニ・チャームが昨年8月に実施した調査によると、一般入試で受験予定の高校3年の女子生徒(100人)の85%が「受験日と生理が重なるかどうか不安」と答えた。一方、高校3年の娘を持つ母親(同)に、入試を控えた娘にしてあげたいことをたずねたところ、「インフルエンザやコロナなどに感染しないよう注意したい」は91%に上ったが、「生理と受験が重ならないよう対策することに注意したい」は44%にとどまった。
痛みあれば薬を使い、産婦人科医に相談を
生理痛は受験本番にも、勉強にも支障を来す。「悩んでいるなら、鎮痛剤を迷わず使ってほしい」と呼びかけるのは、産婦人科医の高橋幸子さんだ。
親世代に根強い「飲み続けると効かなくなるのでは」という思い込みについては、「鎮痛剤は生理期間中、毎日服用しても将来効かなくなる心配はない」と明言。その上で、鎮痛剤について「生理痛を引き起こす成分が体内に作られないようにする薬。少し痛くなってきたと感じる段階で服用することを覚えてほしい」と説明した。
さらに受験日と生理が重なることが分かっていれば、あらかじめ産婦人科を受診し、薬で生理開始を遅らせる方法もあるという。
入試日が近い場合、女性ホルモン「エストロゲン」の配合量が比較的多い「中用量ピル」が選択肢となるそうだ。生理開始予定日の5日前から生理が始まってもいい日まで毎日服用することで、生理を遅らせることができるという。
「ただ人によっては嘔吐(おうと)などの副作用が出る場合もあるので、吐き気止めも一緒に処方してもらうなど、医師に相談してほしい」と語る。
吸水ショーツなど安心グッズを味方に
ほかにも生理に備える方法はある。セイシルを運営する福田さんのおすすめは「吸水ショーツ」を準備すること。着用して試験に臨めば、突然生理になり経血が漏れてしまうのではとの不安を解消できる。「吸水ショーツは高価で、子供のお小遣いでは買えない。遠慮して自分から『買ってほしい』と言えない子も多いので、保護者が準備してあげると心強いのではないか」
ほかに令和5年度に厚生労働省科学研究班が作成した性教育教材「まるっとまなブックレベル2」が生理ケアの参考になる。インターネットから無料で閲覧できる。
高橋さんは「生理ケアについて家族で対話するきっかけとなる情報が充実している。体を温めたり、十分な睡眠をとったり、生理時の快適な過ごし方について参考にしてほしい」と話している。(篠原那美)