「いのちって、何?/死って、何?/どうして、小さな子どもたちが死ななければいけないの?」
この3つの質問はわずか9歳でガンに侵された男の子が精神科医、エリザベス・キューブラー・ロスに送った手紙の一部である。
私は絵本の冒頭にあったこの質問にとても驚き、悲嘆に暮れた。なぜこんな小さな子どもにこれだけ重い現実が突きつけられねばならないのか。私は看護師をめざして学び始めている。自分ならどんな答えを返せるだろうと考えた。でも月並みな言葉しか思いつかない。
「これは、いのちについてのお話です」。キューブラー・ロスはこう書き始めた。とても詩的ですばらしい手紙だった。
「この世でやらなければいけないことを ぜんぶできたら 私たちは からだをぬぎすてることがゆるされるのです。(中略)そして、ちょうどいい時期がくると 私たちはからだからでて 自由になれるのです」
このあと「まるで、きれいなちょうちょのように 自由に神さまのお家にかえれるのです。そこでは ひとりぼっちにはぜったいにならない」と続けている。
語ったのは「神さまの愛」。「大きくても 小さくても 神さまはおなじように愛する」と。生まれたことの意味を、精いっぱい生きることを、いのちの尊さをわかりやすく伝えた。
キューブラー・ロスは末期医療や死の科学のパイオニア的存在だった。生と死の現場に深く関わり、寄り添ってきたのだ。私は言葉の力と優しさを感じた。そして今を前向きに生きようと勇気づけてくれるこの手紙が、とても好きになった。いつまでも心に留めておきたい。
兵庫県明石市 林明寛(19)
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