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Ⅰ期直腸がん、手術で取り残し?心配する70代男性 担当医の説明を読み解くと… がん電話相談から

産経ニュース 2024年11月19日 9時0分

今回の「がん電話相談」は、Ⅰ期の直腸がんで、腫瘍の取り残しがあると担当医に説明されたとして、再手術の可否に悩む70代男性の相談に、がん研有明病院大腸外科部長、秋吉高志医師が答えます。

--今年8月、血便が出たため受けた生検で、Ⅰ期の直腸がんと診断。転移はなく、翌月、内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)を受けました。術後の病理検査の結果、がん細胞が腸壁に1.6ミリの深さで浸潤し、5層(粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜)のうち粘膜下層までの1ミリは取り切れたが、固有筋層に達した0.6ミリは切除できなかったと説明されました。

「担当医による今後の治療提案は?」

--外科手術か経過観察か、とのことでした。手術は体への負担が軽いロボット支援下手術で行うが、場合によって開腹手術となり、必要なら一時的に人工肛門、状態によっては永久人工肛門になると説明されました。

「手術を勧められているのですか」

--判断を任されています。がんを抱えているのは嫌なので外科手術ができればしたいと話しています。

「多分、担当医の説明が相談者にうまく伝わらなかったのだと思うのですが、取り残しというのは相談者の勘違いだと思います」

--取り残しはない?

「実際の病理検査結果が分からないので確実なことは言えませんが、ESDで切除した組織を調べたところ、がん細胞の粘膜下層への浸潤が1.6ミリあった。つまり腫瘍のあった部分は切除されている、ということだと思います」

--取り残しがないのに、なぜ手術を勧められたのですか?

「粘膜下層への浸潤距離が1ミリ未満だと基本的に追加手術はいらないといわれています。しかし相談者は浸潤距離が1.6ミリあり、基準を超えている。その部分にがんが残っているというのではなく、粘膜下層への浸潤距離が1ミリを超えるとリンパ節転移が一定の頻度で起こる可能性が出てきます。リンパ節転移のリスクがゼロではないので手術をしましょうか、という話をされたのだと思います」

「リンパ節は固有筋層のさらに下にあるので手術でしか取り除けません。本当はもっと細かく他の因子、例えばリンパ管侵襲(Ly)や静脈侵襲(V)の有無などを調べて決めます。相談者のように1.6ミリで、Lyが陽性だとリンパ節転移のリスクは10%以上となるため、手術をより前向きに検討することになります。一方、Lyなど浸潤距離以外の因子が全て陰性なら、リンパ節転移の可能性は3%程度といわれています」

--そうなんですね。

「恐らく、経過観察も選択肢として提示されているので、リンパ節転移の危険因子は1.6ミリという浸潤距離だけで、脈管侵襲はなかったのだと思います。ただリンパ節は腸の深いところにあり、早期の転移発見が難しい。さまざまな情報を基に担当医と相談して、最終的には患者自身が決めることになります。一般論として今回のようなケースでは、経過観察は十分医学的に許容されている選択肢ではあります」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。11月4日は休みます。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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