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S状結腸がん切除後に新たながんが見つかり…再手術か経過観察か迷っています がん電話相談から

産経ニュース 2024年7月30日 9時0分

「がん電話相談」の今回は、大腸がんの一種「S状結腸がん」を切除した1年後、新たながんが見つかり、再手術を提案されている54歳女性に、がん研有明病院消化器センター長(相談当時)で現・関西医科大学総合医療センター教授の福長洋介医師が助言しました。

――昨年5月、内視鏡検査でS状結腸内にがんが見つかり、S状結腸を切除しました。ステージⅢaとの診断でした。

「術後の治療は?」

――テガフール・ウラシル(商品名UFT)とホリナートカルシウム(同ユーゼル)の併用療法を始めたものの、3週間で肝機能低下や歩行困難などの強い副作用が出たため中止し、経過観察中です。しかし今年5月、CT検査でS状結腸断端部(手術の切断面)から1センチほどの場所に長径5ミリのS状結腸がん、横行結腸に5ミリ未満のがんが見つかりました。

「そのがんの診断は?」

――それぞれ再発ではなく初発のがんでした。ひとまず内視鏡手術で切除したものの、主治医からきちんと再手術を受けるようにと提案されています。

「どんな提案ですか」

――横行結腸がんは経過観察でよいものの、もう一つのS状結腸がんは(腸壁の粘膜下層に入り込んでいる)浸潤がんだったため、再発防止のため再手術を考えた方がよいと言われました。再手術では患部の切除と付近のリンパ節郭清を行うことになるそうです。再手術した場合、腸が短くなるため、下痢をしやすくなったり、穿孔(腸壁に穴が開く)を起こしたりする心配があるようです。再手術せずに経過観察を続けることもできると言われ、どうすべきか迷っています。

「腸を再度切除して縫合する再手術は初回の手術に比べるとやや難しく、一定の確率で術後に合併症が起きるのは避けられません。合併症の確率は術者の技量によっても変わります。合併症リスクを覚悟してでも再手術を受けるべきかは、がんの再発リスクとの兼ね合いで判断します」

「再発リスクですが、浸潤がんは付近のリンパ節に転移して再発する可能性があります。具体的には①浸潤の深さが1ミリ以上②脈管侵襲陽性(がんが毛細血管やリンパ管に入り込んでいる状態)③がん細胞の分化度が低い(悪性度が高い)④がんが浸潤している粘膜下層の病巣の状態(簇出・ぞくしゅつ)が良くない―などのリスク因子があれば再手術を考慮することになります」

――主治医には経過観察を続けた場合の再発リスクは5%と言われました。5%なら手術しなくてもと思う半面、かりに再発した場合は余命宣告されるほど悪化しているのでは、と心配です。やはり再手術を選択すべきでしょうか。

「5%は低いようでいて、そうでもない数字です。がんが体内にあることが確実なら医師も強く再手術を勧めますが、今回のように不明な場合は確率だけを伝え患者さん自身に判断を委ねるしかないのです。再発した場合の状態は一概には言えません。再手術は合併症リスクを伴う一方、リンパ節に転移していないことが確かめられれば、最終的な病期が確定し、安心して生活できるようになるという利点もあります」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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