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パリ五輪で「性別」巡る論戦にトランプ氏、メローニ氏が参戦 国際的議論に

産経ニュース 2024年8月6日 14時10分

【パリ=板東和正】パリ五輪で性別を巡る論争が影を落としている。昨年の世界選手権で行われた性別検査で失格となった2選手が五輪の女子ボクシングでメダルの獲得を確実にした。米国のトランプ前大統領やイタリアのメローニ首相らが2選手の出場を非難するなど国際的な議論に発展している。

「男性を排除する」

パリ五輪で騒動の渦中にいるのは、ボクシング女子66キロ級のイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)と、57キロ級の林郁婷(りん・いくてい)選手(台湾)。2選手は勝ち進み、6、7日にそれぞれ準決勝を迎える。ボクシングは3位決定戦がなく、2選手はメダル獲得が確定した。

2選手は女子選手として2021年の東京五輪に出場。しかし、国際ボクシング協会(IBA)が昨年主催した世界選手権での性別検査で不合格となったことから、2選手が女子選手として出場することを疑問視する声が交流サイト(SNS)であがっていた。

そうした中、1日に行われた2回戦でヘリフ選手と対戦したイタリアのアンジェラ・カリニ選手が開始46秒で棄権した。開始早々強打を浴びたカリニ選手は棄権を告げ、リングで号泣。「これほど強く殴られたことはなかった」と打ち明けた。

この試合を受け、2選手の出場をめぐる公平性の論争が過熱。カリニ選手の出身国の首相であるメローニ氏は「公平な試合ではなかった」と疑問を投げかけ、「男性の遺伝的特徴を持つ選手は女子選手の試合に出場すべきではない」と発言した。トランプ氏も演説で、次回ロサンゼルス五輪を念頭に「男性を女性スポーツから排除する」と主張した。

「私は女性」

出場資格を与えた国際オリンピック委員会(IOC)は性別はパスポートに基づき確認しているとして出場に支障はないと反論。IOCのバッハ会長は3日の記者会見で「2選手は女性として生まれ育ち、女性として競技に参加してきた」とし、不合格にしたIBAは「適切な手続きを経ていなかった」などと述べた。IBAは組織運営などを問題視されて統括団体としての承認をIOCから取り消されており、パリ五輪はIOCの管轄下で開催されている。

欧州メディアによると、ヘリフ選手は3日の準々決勝で勝利した直後、「私は女性だ!」と涙ながらに訴えた。

しかし、IBAのクレムレフ会長は5日、オンラインで記者会見し「2選手は(昨年の)検査の結果、『男性』であると判明した」と改めて主張。2選手は男性ホルモンである「テストステロン」の値が男性並みに高かったと明らかにした。

「トランスジェンダー」と決めつけ中傷も

2選手とも性発達が一般の人と異なる「性分化疾患(DSD)」とされるが、SNSでは生まれたときの身体的性別と性自認が異なるトランスジェンダーだと決めつけて中傷する投稿が目立つ。

IOCは誤情報に基づく誹謗(ひぼう)中傷をやめるよう訴えている。

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