以前に「アイフレイル」(加齢とともに視機能が低下しさまざまな影響が出る状態)について書かせていただいたことがありますが、今回もフレイル(健康な状態と要介護状態の間くらいの状態)やサルコペニア(筋力が落ちた状態)と少し関連のあるお話です。
フレイルやサルコペニアがあると、身体機能が低下し体力的に弱っていくというイメージが強い状態です。筋肉が少なくなると転倒したり骨折したりする可能性が高くなるのは何となくイメージできると思います。
では筋肉が少ないことで他の病気になる危険性が高くなるイメージはつくでしょうか? 私もあまりそのイメージはありませんでしたが、神経系の病気のリスクと関連が高いとされる研究が発表されています。
中国の四川大学からの報告ですが、アルツハイマー病やパーキンソン病のリスクは筋力のある人の方が低いとの内容でした。2千人を超える方のデータを10年近くにわたって追跡したところ、筋力の強い方々の神経系変性疾患(パーキンソン病やアルツハイマー病など)のリスクが26%低いことがわかったそうです。
一方で皮下脂肪についても記載があり、おなか周囲の脂肪が多い人や腕の脂肪の多い人たちのリスクは上昇するとのことでした。肥満を解消し筋肉量を増やすことは心身の健康に大切ということが改めて示された結果になっています。
年齢を重ねて筋肉量を増やすことはなかなか難しいかもしれませんが、減らさないように努力をすることはできると思います。天候の良い日にはできるだけ歩くこと、脂肪を増やさないために規則正しい生活リズムで食生活を整えることなどは可能ではないかと思います。なかなか痩せられないとのお話もよく聞きますが、ちょっとした工夫でカロリー摂取は減らせます。
たとえばご飯をよそうときに、一旦普段通りに入れてその後一口分だけ炊飯器に戻すようにすれば長期に見ればかなりの減量効果があります。お弁当を買うときにもカロリー表示に着目して今までよりも100キロカロリー低いものを選ぶなどの工夫をすれば徐々に積み重なっていきます。私はそうやって1年半で13キロ痩せることに成功しました。脳に限らず健康は毎日の積み重ねであることを再認識していただければと思います。
(済生会和歌山病院脳神経外科医長 三木潤一郎)