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せきが出なくても肺炎かも マイコプラズマが流行、患者報告件数は過去最多 健康カフェ(278)

産経ニュース 2024年10月10日 9時0分

マイコプラズマ肺炎の患者数が急増しています。国立感染症研究所が発表した最新(9月23~29日)の患者報告件数は、現行の集計方法になった平成11年以降で最多となりました。

肺炎マイコプラズマという細菌が気道から肺に侵入して増殖し、炎症を起こす病気です。一般的には最初に発熱があり、遅れてせきが出始めます。ほかに、たん、悪寒、倦怠(けんたい)感、胸の痛み、腹痛、下痢などの症状が出る場合もあります。

40代前半の男性がクリニックを受診しました。数日以上にわたって悪寒がして、高熱と頭痛も続いているとのことでした。そこでまず、新型コロナウイルスとインフルエンザの抗原検査を行いましたが、どちらも結果は陰性でした。

次に考えなければならないのは髄膜炎や脳炎です。これらは脊髄や脳といった中枢神経に細菌やウイルスが感染して起こる疾患です。高熱と頭痛が続き、意識障害やけいれんといった症状が出る場合もあります。これらの病気を疑ったときは画像検査と髄液検査を行うために、総合病院や脳神経専門病院への紹介が必要になりますが、それらの病気を示唆するような症状は見られませんでした。

せきやたんが出るといった肺炎特有の症状の訴えはありませんでしたが、呼吸音を聴診して、少し気になるところがあったので、念のため肺炎の検査をしてみました。その結果、胸部エックス線で肺に影が見つかりました。血液検査でも炎症を示す値が高くなっていたため、肺炎と診断し、治療を開始しました。男性患者さんには「発熱などの症状の原因は肺炎によるものとみられます」と話し、抗生剤を処方。経過を見ることにしました。

その数日後には解熱し、頭痛も治りました。1週間後の再診時には肺炎の影は消え、血液検査でも炎症の値は元に戻っていました。

肺炎を患っていても、熱があまり高くならず、せきやたんもそれほど出ないという場合、かなり悪化するまで気付かないことがあります。元気がなくなったり、食欲が落ちたりして、クリニックに連れてこられた高齢者が肺炎を起こしていたというケースも珍しくはありません。

男性患者さんも最後までほとんどせきが出なかったので、肺炎になっているとは思いもよらなかったそうです。「頭痛が治ってよかったです」と安心した表情を浮かべ、クリニックを後にしました。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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