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腎がんの新選択肢キイトルーダ 副作用懸念も発生は低頻度 がん電話相談から

産経ニュース 2024年8月20日 9時0分

今回の「がん電話相談」は、Ⅲ期腎がんの60代男性の術後療法について、副作用が心配という男性の妻からの相談に、がん研有明病院泌尿器科の化学療法担当部長、湯浅健医師が答えます。

──夫は昨年11月、血尿が出て受診し、腎がんと診断されました。右腎臓を全摘する手術を受け、病理検査の結果、進展度(TNM分類)は、横隔膜より上の下大静脈内にがんが広がっている「T3c」▽リンパ節転移のない「N0」▽遠隔転移のない「M0」で、病期はⅢ期でした。再発リスクが高いがんで、術後の補助療法として免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)の投与を勧められました。

「キイトルーダは比較的新しい薬剤です。再発リスクの高い患者が対象となるため、投与が提案されたのですね。基本的には1年にわたり、3週間または6週間間隔で点滴投与します」

──再発はどうですか?

「腎臓を全摘または部分切除した患者を対象に、術後の補助療法としてキイトルーダを投与したグループと、プラセボ(薬効のない偽薬)を投与したグループとを比較した試験(令和3年発表)では、2年後に再発しなかった患者の割合はキイトルーダ群が77・3%、プラセボ群が68・1%で、再発リスクはハザード比(リスク比較の計算式)で32%低下と報告されました。その後の解析により全生存期間の延長も確認されています」

「腎がんに限らず、どんながんでも術後の再発というと新しくがんができる、というイメージかと思いますが、そうではありません。手術時点ですでに微細ながん細胞が体の中に散らばっていて、だんだん大きくなってCTなどの画像検査で見えてくることを指します。つまり再発が減ったというのは、がん細胞は残っていたけれど、早い段階でキイトルーダを投与してそれを駆逐したということになります」

──副作用についてはどうでしょうか?

「必ず全ての患者に副作用が起こるわけではありません。キイトルーダはがん細胞を排除する働きのある免疫細胞(T細胞)の本来の力を利用してがんを攻撃する薬です。キイトルーダで活性化したT細胞が正常な細胞まで攻撃してしまうと副作用が表れます。自分の肺機能を攻撃してしまうと間質性肺炎に、大腸の細胞をやっつけてしまうと潰瘍性大腸炎になります。いずれも発生は低頻度ですが、中には重篤化することがあります」

──相談時点ですでに術後半年近く過ぎていますが効き目はどうでしょうか?

「投与が早くても遅くても効き目はありますが、術後、残存するがん細胞が少ない時期が一番よく効くと思われます。転移が分かってからキイトルーダを投与しても治る患者は多くありません。今回の場合、半年近く無治療でも再発の兆候がないとのこと。治療なしでも再発しない可能性もあります。保険適用の対象なので、医療者としては治療法があることを知らせ、するかしないかの判断を患者側に委ねたのでしょう」

──再発の治療は?

「手術する例はあまりなく、免疫治療薬や血管新生阻害薬を使って治療することが多いです」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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