Infoseek 楽天

<ビブリオエッセー>人間って変わらない  「10人のお坊さんにきいてみた」講談社編(講談社)

産経ニュース 2024年7月29日 12時32分

実は違う本を求めて本屋さんへ行った。お目当てを見つけたのだが、お隣にこのキャッチーなタイトルと表紙が目に入った。本屋さんの醍醐味はこんな一期一会の出会いにある。

思春期ど真ん中の本だなと中学に勤める私は思った。若者たちが感じる「悩み、モヤモヤ、イライラ、苦しみ」に宗派の異なる10人のお坊さんたちが仏教の教えをもとに答えている。

たとえば「承認欲求」や「生きる意味」…。印象的だったのは、「『役に立つ』『役に立たない』 物事を分けることで悩みは深まる」という説法だった。分けて考えることを仏教では「分別」というが、いい意味ではないらしい。仏教では「無分別」を説くそうだ。

「役に立つ、役に立たない、幸せとか不幸とか、すべてを二項対立で考えてしまう。そうすると意味があるもの、意味がないものというふうに分けて、意味がないものには価値がないという考え方がそこに生まれていきます」

高収入・低収入や勝ち組・負け組…。人間は分類することで安心感を得るのか。でもそれでは「隠れたよさ」を見逃してしまう。あるいは人生の半分は睡眠と食事とトイレだと解説したお坊さんの「(だから)イライラ、モヤモヤは時間の無駄」と言い切る潔さに魅かれた。

それにしても大昔からある仏教の「智慧」の教えが現代の若い世代の悩みにも通じることに驚いた。時代は違えど「人間って変わらないな」と少しいとおしく感じた。

千葉市美浜区 かかか(37)

投稿はペンネーム可。650字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661 産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本や漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

この記事の関連ニュース