バブル経済を謳歌し、後にそれぞれ五輪汚職事件と二信組事件で東京地検特捜部に逮捕される高橋兄弟の物語。意外にも経済人の武勇伝のような明るさが貫く。
実際、兄の治之はスポーツビジネスの先駆として電通専務に。弟の治則は世界のリゾートを買収、後の米大統領にも食い込んだ。
兄弟を頼り、事件前後に見捨てるのは、融資先開拓に血眼の金融界とビジネス化に躍起なスポーツ界だ。敏腕な元『週刊文春』記者が隣で見てきたかのように描く。
副題には「五輪を喰(く)った兄」と「長銀を潰した弟」。だが、喰われ、潰されたのは、兄弟の方ではなかったか。(文芸春秋・2310円)