63歳で作家デビューし、芥川賞を受賞した著者の初エッセー集。受賞後の寄稿や書き下ろし、寸言などがちりばめられている。
結婚し、幸せな暮らしにも物足りなさを覚えた日々、夫の死で絶望のなかに見つけた光、子供のころからの夢だった「本を書く人」になるまでの道のり…。困難に出くわすたび、その苦しみに意味を見つけて立ち向かってきたという来し方と、作家となってからの思いがつづられる。
今年70歳を迎え、「鉦(かね)太鼓、笛を鳴らして老年期こそ人生の本番」という勇ましい生きようからもヒントがもらえそうだ。
(河出書房新社・1595円)