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<話題の本>ドラマ化で注目 余白のある世界観 『また団地のふたり』藤野千夜著(U-NEXT・1760円)

産経ニュース 2024年11月17日 9時40分

古い団地の隣の棟に住む幼なじみのなっちゃんとノエチは50代前半、独身。ともに一度は出た団地の実家に戻った。なっちゃんは本業のイラストレーターの仕事が減り、ネットオークションなどで稼ぎ、ノエチは大学の非常勤講師で収入を得る。

そんな2人の日々を描いた小説の続編。令和4年刊行の前作が、この秋、NHKBSでのドラマ化(主演・小泉今日子、小林聡美)で一気に注目され、7月刊行の双葉文庫版が約12万部とヒット。単行本編集担当の寺谷栄人さんによれば、続編の刊行もドラマ化をきっかけに決まり10月下旬に発売、3刷1万6000部に。

なっちゃんの部屋にノエチが入り浸り、テレビや映画を見ながら批評を言い合ったり、健康診断の結果を気にしつつ料理やお菓子に舌鼓を打ったり。前作同様、大きな事件や騒動もないが、団地という空間でなじみの人々に頼り、頼られ、何より分かりあえる親しい友が身近にいる心強さと楽しさがしみじみと伝わる。

「コロナ禍とは逆の、密な2人の話。人と人が支え合う姿が憧れや共感を得たのでは」と寺谷さん。「著者の文章も力の抜け加減が巧みで、余白の妙が感じられる」とも。物語の世界にも余白が感じられ、ほっとできる。(三保谷浩輝)

■『また団地のふたり』藤野千夜著(U-NEXT・1760円)

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