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午前4時の森は「個にして全、全にして個」 何とも不思議な一体感 美村里江のミゴコロ

産経ニュース 2024年11月25日 12時50分

仕事で宿泊するホテルの近くに大きめの公園や緑地があると、夕方や朝に歩いてみる。もちろん仕事で来ているので体調や時間的余裕次第だが、見知らぬ森林を歩くのは大変楽しい。

数年前の秋のこと。

前の晩、早めに寝すぎて午前4時前に目が覚めた。ほうじ茶をすすりながらカーテンを開けると、窓外は真っ暗。しかし眼下に広がる茂った緑には、ポツポツと街灯が配置され、道もきれいに舗装されていて快適そうである。

出番も夕方近くで昼にホテルを出ればいいので、二度寝する前提で散歩に出てみることにした。

エントランスから出ると、長髪が逆立つほど風が強かった。慌てて髪を結わえつつ、内心ワクワクである。私の育った埼玉県北部はいつも風が強かったので、強風は大歓迎。機嫌良さそうに枝葉を揺すっている木々の中へ、いざ出発。

まだ太陽は遠く月が優勢の暗がりでも、窓から見た通り街灯のおかげで明るく、道は平らかで歩きやすかった。手入れの行き届いた花壇や、風による葉擦れの音、そのはざまでカアカアにぎやかなカラスの会話も楽しい。いい公園だ。

しかし最も心ひかれたのは、暗がりから時々浮かび上がる人々の気配である。

「朝の公園」とひと口に言っても、実は時間帯でかなりメンツが変わる。5時、6時、7時と、明るくなるにつれ社交的な人が増え、広場やベンチでコミュニティーが形成されている様子も垣間見える。

それに対して4時。ここまで早い時間に歩くことは私も少ない。何かいつもと違う気配を感じるなと思ったら、自分の行動に集中している人ばかりなのである。

健康目的以上のピッチで軽快に走る、鍛え上げられたふくらはぎのお兄さん。つえを片手に、後ろ歩きや片足立ちを交互に行う高齢のおばあさん。リハビリなのか、少し半身を傾けつつゆっくりゆっくり進むおじさん。

各自、自分の体に集中しきっていて、なんだか私の大好きな図書館の空気を感じた。本や勉強に集中している人々が集うと高まる、「個にして全、全にして個」のような不思議な一体感。

3周回ってすっかり満足し、温まった心身でざわめく森を後にした。朝4時の公園、図書館好きには特にオススメである。

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