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「いつかはがっつり社会的テーマを」 直木賞を「ツミデミック」で受賞、一穂ミチさん

産経ニュース 2024年8月14日 9時0分

新型コロナウイルス禍を背景にした犯罪小説集「ツミデミック」(光文社)で第171回直木賞を受賞した。6つの短編には、コロナ禍の人間模様や社会の様子がちりばめられた。そこに罪に手を染めてしまった人や、悪事を思いとどまって今後に希望を感じさせてくれる人らが描かれた。

「リアルタイムでのパンデミックでなければ生まれなかった小説だと思う。さまざまな犯罪が起こり、人と人との小さい分断があちこちで起こっていた」。コロナの先行きが見えずに不安な頃の作品については「瞬く間に悪い方に向かい、誰を信じていいかわからなかった。創作だけど、あの日々の自分の心のかけらが刻まれている」と振り返る。

改めて作品を読み返すと、あの頃を忘れている自分にも気づく。「年長の方が戦争の記憶は語り継いでいかなければいけないということが腑に落ちた」。パンデミックを小説で残した意味は小さくない。

素顔は公開しない。「インターネットに出てしまうと消すことができない時代。顔を出すのは勇気がいること」が理由だ。受賞が決まった先月17日の会見はマスク着用で臨んだ。「基本的には顔面NG。今後もこういう機会があれば、マスクでの顔出しをお許しいただければ」と理解を求めた。

大阪市出身で今も在住。会社員との兼業。職場で毎朝読む新聞5紙は、小説の題材探しになっている。「現代小説を書く上で、私にとって社会情勢は切り離せない。子供の頃に起きたグリコ・森永事件のような記憶、『昭和の混沌』が奥底にあるんだと思う。いつかはがっつりと社会的なテーマに取り組んでみたい」

お笑いの空気階段と解散した和牛が好きな46歳。(斎藤浩)

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