朝食に好物のあんパンを食べ続けて50年以上。だが最近、健康を案じる妻が意図的に買い忘れてくる気配がある。そんなときは、本棚からアンパンマンの絵本を取り出して気を紛らわせる-。
「ねんてんさん」の愛称で知られる俳人が、産経新聞大阪本社発行の紙面で老年期の日常をユーモアたっぷりにつづったエッセー集。年を重ねて身心が衰える状態を耄碌(もうろく)というが、本書で伝えたいのは老いを受け入れ、積極的にモーロクを楽しむ極意だ。
頑張らず、草花のように気ままに風に揺られていたいと願う著者の、遊び心あふれる世界が楽しめる。(創風社出版・1430円)