宮内庁が昨春から運用を始めたインスタグラムが好評を博し、これまでメディア頼みだった皇室の情報発信は転機を迎えている。ときに協調、ときにバッシングと揺れ動いてきたメディアの皇室報道の歴史をひもとく一冊だ。
大正10年に欧州に外遊した皇太子裕仁親王(のちの昭和天皇)を、「初々しい御容子が英仏貴婦人達の人気の的」と報じた新聞記事。大正デモクラシーの機運を背景に、「人間」としての皇室像を伝えようとする模索が始まっていた。ただ、それは同時に読者の興味関心に沿って「消費」される、現代の皇室が抱える苦悩の始まりでもある。(新潮選書・2090円)