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「文学的野心を評価」「コロナ禍の人々、見事に書き分け」芥川賞・直木賞で選考委員が講評

産経ニュース 2024年7月17日 19時45分

第171回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は朝比奈秋さん(43)の「サンショウウオの四十九日」と、松永K三蔵さん(44)の「バリ山行」に、直木賞は一穂ミチさん(46)の「ツミデミック」にそれぞれ決まった。

芥川賞の朝比奈さんは昭和56年、京都府生まれ。現役医師として働きながら小説を執筆し、令和5年に「植物少女」で三島由紀夫賞を受賞。芥川賞候補は初めて。受賞作は結合双生児の姉妹の杏と瞬が主人公で、黒と白のサンショウウオのような陰陽図を見て以来、杏は互いの意識が融合してしまう恐怖におびえ、瞬は伯父の死を契機に自身の死を経験する。

松永さんは昭和55年、茨城県生まれ。令和3年に「カメオ」で群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。芥川賞候補は初めて。受賞作は勤務先の建装会社の登山部で、山登りの魅力に目覚めた会社員、波多が主人公。大手頼みの会社の先行きに不安が募るなか、波多は通常の登山ルートを外れて山中の道なき道を進む「バリ山行」にのめり込んでいく。

川上未映子選考委員は「サンショウウオの四十九日」について「小説にしかできない難しい問題に着手した文学的野心が大きく評価された」と述べ、「バリ山行」については「登場人物の造形や登山と自然の描写が見事で、書くべきものを地に足をつけた筆致で書いている」と評価した。

直木賞の一穂さんは昭和53年、大阪府出身。平成19年に「雪よ林檎の香のごとく」でデビュー。令和3年に「スモールワールズ」、4年に「光のとこにいてね」で直木賞候補となり、今回が3回目の候補。受賞作は新型コロナウイルス禍を背景にした6つの短編が収められた犯罪小説集。作品名は罪とパンデミック(世界的大流行)を掛けた造語だ。

三浦しをん選考委員は「短編集としての味わいが各編バラエティーに富み、コロナ禍で大変な状況に置かれた人の暮らしや感情を見事に書き分けている」とたたえた。

贈呈式は8月下旬、都内で開かれる。賞金は各100万円。

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