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<ビブリオエッセー>「ヨロヨロ期」に備えて  「百まで生きる覚悟-超長寿時代の「身じまい」の作法」春日キスヨ(光文社新書)

産経ニュース 2024年7月5日 12時59分

死ぬまで元気でいたいと誰もが考える。ピンピンコロリだ。本書は最初に90代の「元気長寿者」3人の話がある。生きる意味を見つけ、気力を生み出す生き方にうならされた。

しかしこの「人生100年時代」、家族社会学者である著者が指摘するのは「ピンピン・ヨロヨロ・ドタリ」である。身体能力、判断力も低下するヨロヨロ期に入り、ある日突然ドタリと転倒して動けなくなる。誰もがその可能性を知りながら、備えをしていないという指摘は、わがこととして胸に刺さる。

昔とは異なり、子供の支援を受けられるとは限らない。自分を支えてくれるネットワークをどう作るか。そもそも動けなくなった自分が、どういう身の振り方を願うのか。まさに「何がめでたい」。課題は山積している。

考えたこともない私は途方に暮れたが、だからこそ著者は「終活(死に支度)」より「老い支度」が必要だと強調する。また巻末には、75歳以上のひとり暮らしの老人が転倒し、大腿骨頸部を骨折した-という想定で、そのとき自分に何ができるか、利用できる制度を具体的にまとめていて、これが非常に参考になった。

67歳で仕事を辞めて観光ガイドボランティアを始めた私。人付き合いが苦手な自分に務まるだろうかと不安だったが「若手が来た」と歓迎され、今ではすっかりハマっている。先輩方はかなり高齢な方も若々しく朗らかに活動され、かくありたい元気長寿者のお手本である。

お客さまに喜んでいただけたときの嬉しさ。誰かのお役に立つことで実は自分が元気をもらっていた。人間って変われることを実感した。大好きな畑や趣味とともに楽しいと思えることを長く続けたい。本書がヒントをくれた。

神戸市東灘区 梶原基司(69)

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