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人生は何歳からでも輝ける 『婚活マエストロ』 <聞きたい。>宮島未奈さん(作家)

産経ニュース 2024年12月15日 7時0分

「ずっと『成瀬』しか本が出ていなくて、持ち歌一曲で回っている感じだったので、新しい歌が増えたみたいですごくうれしい」

デビュー作『成瀬は天下を取りにいく』で本屋大賞に輝き、受賞後第一作を刊行。婚活をテーマにした大人の青春小説だ。

浜松に住む40歳、独身のライター、健人に婚活事業会社「ドリーム・ハピネス・プランニング」の記事を書く仕事が入る。古びたホームページや事務所を怪しみつつパーティーに参加した健人は、同社の専属司会者で「婚活マエストロ」と呼ばれる奈緒子と出会い、婚活に対する考え方、そして人生が変わっていく。

執筆の発端は、連載の依頼に来た女性編集者との会話。学生時代に婚活パーティーの司会経験がある彼女から東京の婚活話を聞き、「地方なら今でも古い感じの婚活パーティーが生きているのではないか、これは書けそうだという直感で引き受けました」。

結末やディテールは書きながら考えたというが、若者から高齢者までの婚活を巡る人間模様や人生の機微が描かれ、何歳からでも恋はできて人生を輝かせられる-と力を与える作品になった。

「成瀬も健人も、未来のことは分からないというのが一番書きたいこと」。自身、滋賀で主婦として過ごす一方、「自分の力を出し切れていないのではないか」ともどかしさも感じていた日々が、40歳になる年にデビューして一変。続編『成瀬は信じた道をいく』もヒットし、各種メディアからプロ野球の始球式まで引っ張りだこに。

「40歳から新しいことを始めるのは難しいと思う人は多い。でも、39歳まで無名だった私が40歳で本屋大賞を取れて、『自分も何かできるかも』と思ってもらえたら」

〝持ち歌〟も増え、今後はジャンルに捉われず、「その時々で書けるものを書く」という。

「(作品執筆に)運命はあると思っています。今の私に本格ミステリーは書けなくても、書ける時期はきっと来る。いつ、どんな運命が待っているかは分からないけど、その時を待つという感じですね」(三保谷浩輝)

みやじま・みな 作家。昭和58年、静岡県生まれ。京都大卒。令和5年刊行の連作短編集『成瀬は天下を取りにいく』で今年、本屋大賞を受賞。夫、小学生の子供と滋賀県在住。

■『婚活マエストロ』(文芸春秋・1760円)

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