俳人としてだけでなく、小説家、編集者として多彩な活動を見せた高浜虚子(1874~1959年)の評伝。
現在の松山市に生まれた虚子は、師事した同郷の正岡子規が死去した後は独自の道を切り開き、雑誌『ホトトギス』を拠点に俳人を育成した。俳人である著者は「余は平凡が好きだ。余は世間並が好きだ」と随筆で述べた虚子の言葉に注目、その真意を深く分析する。
また、83歳の虚子が席順にこだわらない句会の平等性を説いたエピソードを、子規が抱いていた思いと重ねながら紹介する。俳句を大衆文芸として浸透させた先人の実像を、親しみを込めて描き出している。 (ミネルヴァ書房・2860円)