時代の変化とともに姿を消していった野球場や競馬場、遊園地の痕跡をたどり、かつての輝きを記録した一冊だ。
例えば、名古屋市にあった山本球場では記念すべき春のセンバツ第1回大会(大正13年)が開催された。すぐそばに大きな旅館があったため、レフト方向が極端に狭いという特殊な形状だった。「伝統の一戦」と呼ばれる巨人対阪神戦の始まりの地にもなったという。
改称を経て平成2年に廃止された山本球場の跡地は住宅地となり、その一角に「センバツ発祥の地」と刻まれたモニュメントが残るのみ。往時渺茫(びょうぼう)としてすべて夢に似たり、だ。(理工図書・2640円)