書店で表紙を見て、中身が気になった人が多いのではないだろうか。意表を突く手のひらサイズ。歯科に置かれていても違和感のない書名。赤いリップが塗られた口は、見る者に強烈な印象を与えるだろう。書名からは内容を推し量れない。ビニールフィルムがかけられ、立ち読みできないのがもどかしい。
本書はホラー作家・背筋さんの新作。先月発売されたばかりだが、増刷を重ねて15万部を発行、背筋さんの近著『穢（けが）れた聖地巡礼について』（KADOKAWA）とともにベストセラーランキングを席巻している。好調な売れ行きは、昨年8月刊行のデビュー作『近畿地方のある場所について』（同）で注目された背筋さんの人気によるところもありそうだ。
縦115ミリ、横85ミリのA6変型判で63ページと短い小説を、なぜ単行本にしたのか。ポプラ社によると、もともとはウェブサイトに掲載するために依頼した短編だった。その怖さ、面白さが口コミで社内に広まり、ウェブより紙の書籍にした方が「意外性のある怖さ」が読者に伝わるのではないかという話になったそうだ。コンパクトな形は手に取りやすい。編集部では「本文内にも仕掛けを施しています。楽しんでいただけたらうれしい」としている。（寺田理恵）
『口に関するアンケート』背筋著（ポプラ社・605円）