京都市は、不登校の児童や生徒の居場所をインターネット上の仮想空間(メタバース)に設ける支援事業の実証研究を来年1月から開始する。オンラインで学習をしたり、メタバース上の教室で自身のアイコンを操作して人とコミュニケーションしたりできる居場所を作る。実証研究に先駆け、今年10月からはオンライン学習の試行実施を行い、6割以上の保護者が「子供の良い変化」を感じた。実証研究では対象者を拡大し、支援のあり方を模索する。
市内の不登校の小中学生は令和3年度の2022人から5年度は3151人と増加傾向にあり、支援の拡充が急務となっている。対面でのコミュニケーションに苦手意識を抱く子供が多い中、参加するハードルの低いオンラインでの学習や交流によって実体験への関心を養い、対面での支援施策につなぐ入り口となることを狙う。
試行実施は10月から約2カ月半にわたって行われた。不登校の小中学生34人が参加し、オンラインで理科やプログラミングなどの授業を実施。一部は市青少年科学センターでの校外学習にも参加した。実施後に行われたアンケートでは、6割以上の保護者から「子供に良い変化があった」という回答が寄せられた。
実証研究は来年1~3月に全10回実施する。市立小中に在籍する小4~中3の児童生徒が対象。募集定員は40人程度で参加無料。希望者は在籍校に相談してほしいとしている。松井孝治市長は記者会見で「不登校の背景は多種多様。いろいろな事情に応じて、ほかの人と一緒の学びに戻っていく道筋を広げられたら」と述べた。
メタバースによる不登校支援は東京都やさいたま市、大阪府八尾市などでも行われている。(荻野好古)