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哲学的対話、他流試合…考える仕掛けが成長の原動力 偶然ではない東大20人合格 教育の力 洗足学園(中)

産経ニュース 2024年12月13日 10時0分

9月、洗足学園中学高等学校の総合探究の授業で卒業生の女性が同校に入学して約半年の1年生を前に講演した。卒業生らが就業体験を在校生に伝えるキャリアプログラムだった。

数年前に卒業した女性は、教育者になることを夢見ていた。進学先の大学もそれを基準に選んだ。そして関東の大学在学中、「日本の狭い教育事情を知るだけではダメだ。世界を知りたい」と、さまざまな国に行き、ボランティア活動を通して見聞きしたという。

その時、強く感じたのは、明日を生きることすらままならない子供たちが世界にたくさんいるということだった。「ここにこそ自分の人生をかけたい。教育の前に、必要なことがある。それは健康を守ること」。女性は大学在学中に文系の学部から医師を目指し医学部へと転籍。現在、小児科医を務めている。

進学は人生の中期目標

同校は近年、大学受験で東京大に20人前後、国公立大に80人超の合格者を出し、海外大への入学者もいる進学校に成長した。だが、そうした実績では測れない同校の魅力は、小児科医になった女性のような「生き方」にあると、中高の玉木大輔オフィスマネージャーは言う。

玉木氏は「学校の目標は、子供たちが自分の人生を自分でデザインできるようになること。進学はホップステップジャンプのステップで、人生の中期目標に過ぎません」と強調した上で、こう指摘した。

「職業も人生の一つで、人生そのものではない。わたしたちは6年間の学校生活で、生徒各自が知らない、想像のつかない世界をみせる。結果、それが大学進学、職業選択につながる。そうした学びの場を作っている」

講演で、女性も「中学高校での幅広い学びがベースにあったからこそ」と語ったという。

結論より思考重視

幅広い学びのために、同校ではさまざまな仕掛けをしている。

平成30年から導入した「哲学的な対話」もその一つ。平等や平和、恋愛…。そうした答えの出ないことをテーマに対話の手法を用いて、各自の考えを深めていくプログラムだ。これを中学一年からほぼ一カ月に一度のペースで、6年間続ける。対話は①相手の意見を否定しない②自分の考えにも常に疑問を持つ-が条件。結論を出すのではなく、考え続けることに重きを置く。これによって生徒の視野を広げることにもつながるという。

もう一つは、学外活動の挑戦である「他流試合」の励行だ。国内外を問わないコンテストに参加する。例えば、令和元年開催の政策金融公庫による高校ビジネスグランプリで、同校の生徒らは準グランプリを獲得した。受賞したのは、環境に優しいレジ袋「エネルフィッシュ」で、魚の嫌う苦み成分を配合した生分解性プラスチックで、魚の誤飲を防ぐレジ袋をつくるというものだ。

他流試合の成果は、始業式や終業式などで全校生徒の前で報告する。玉木氏は「学校という狭い範囲から飛び出し、より社会に近いところで体験を積む。12歳から18歳の間にその経験をすると全然違う。タネがないところに根っこは張らないし、芽も出ない」と語る。

進学の幅が「私立の価値」

成長を促す同校の取り組みで礎になっているのが、生徒が考える授業だ。例えば数学の授業では、校内にある高さ3メートル以上ある立像を、脚立やメジャーを使わずに、ミリ単位まで計測する。考えていくうちに、生徒は相似の概念にたどり着く。ICT(情報通信機器)も積極的に活用している。そうした中で、確かな進学実績も積み上げられてきた。

玉木主任が「一番分かりやすい構図」として挙げるのは、帰国子女の生徒の進学実績。東京大をはじめ、国立大など多岐にわたり、英語だけで勝負して入れるところではない。玉木氏は「どこの有名大に入ったとかではなく、進学の幅をみてほしい。それこそが私立学校の価値なんです」と強調する。(大谷卓)

洗足学園中学高等学校

昭和51年、洗足学園第二高等学校と同第二中学校を洗足学園大学附属高等学校・同附属中学校と改称。平成14年に「付属」を外し、現在の校名となる。社会で活躍するために必要な要素として「高い学力」「豊かな感性」「コミュニケーション能力」「広い視野」を養うことを掲げる。令和5年度の合格実績でみると、国公立大で東京大15人、横浜国立大12人、私大で明治大137人、早大101人、上智大91人、慶応大81人など。海外の大学にも計10人が合格している。

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