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受験勉強後半戦スタート 「上がらない成績」にいら立つ感情を親は抑えられるか 桜井信一 桜井信一の攻める中学受験

産経ニュース 2024年9月7日 10時0分

我が家が引っ越したときのことなのですが、私の体調が急激に悪くなったのです。かかりつけの病院も変わったし、まあ一時的なことかなと思っていました。すると、出版社さんが「引っ越し鬱という言葉があるぐらいですから気を付けた方がいいですよ」と言ってくださったのです。

すぐに調べてみるとなるほどなるほど。引っ越しのバタバタを乗りこえてホッとしたことが逆にリズムを狂わせたのかあと。でもそんなこと言ったらオレの人生ずっとバタバタだぞと、ホッとした2日後にゾッとしたなんてこと、何度もあったなあと思いながら、思い出し笑いをしました。

皆さんはこんな経験ありませんか。「キューっと緊張して、ガクッと崩れ落ちる」。しかも、その崩れ落ちるときの感覚が「がっかり」とかではなくて、首から下の骨と筋肉が、頭を支えることを放棄したような感覚。あるでしょう?

そうです。中学受験生の親をしていると、日々の勉強でこの軽い症状がきますし、模試の後にこのデカいのがくるわけです。でもピノキオのごとくすぐに立ち上がることになる。仕方がない。これは6年生の終わりまでの我慢なんだからと……。

これ、中学受験生の親を頑張っている証拠です。塾に任せっきりの親は、肩を落としてため息をつく程度。つまり、頑張り度合いが期待度合いになり落胆度合いになるわけですね。

ところが、これが良いことかどうかという話になると別問題。「キューっ、ガクッ」を繰り返すことは、躁鬱を繰り返すことと同じ。ヒステリックになり、罵声もあり、無茶な課題もあり、何でもありになってしまいます。

頑張っている横顔を見て優しくなるときもあれば、鬼の形相で叫ぶときもある。これ、本当に危険というかメリットがない。デメリットの山。優しいときのハグで挽回できないことは誰でもわかるはずなのですが、噂によるとこれは「中学受験あるある」というではないですか、ということはどこの家もやっている日常だからと段々正当化されてしまいます。

よーく考えてください。皆がやっていることは負け組です。中学受験で頑張っている子のほとんどが成績が上がらず、下剋上できずに終わるわけですから、勉強法も家で起きている出来事もすべて敗者への道です。「自分だけがこうなる」という発想でないといけないわけです。明らかによそと違うケースにならないといけないのです。

私も経験しました。こみ上げてくる怒り。女の子を殴るわけにいかないから、本を机に叩きつける。すると、余計に興奮する。どんどん深みにはまり、モチベーションと時間の両方を失う。これではいけないと――。その怒りを抑えた方法はここでは書けないので興味のある方は拙著をご覧ください。私の経験上、3秒深呼吸とか、張り紙とか、そんなぬるい方法で止めることができません。もしそれで止めることができる程度の怒りなら、その程度必死さなのでしょう。

抑えきれないほどの怒りを何とかしたい、罵声を浴びせるのをやめたい、実は子どもと楽しく受験したい。そう思うなら、あらゆる方法で止めなければいけません。それができて初めて子どもの成績は上昇するでしょう。

筆者紹介

桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。

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