少子化や民間の給与引き上げなどを背景に、大阪府警の警察官受験者数が低迷している。府の警察官の定員は2万人余りだが、令和5年度までの過去5年間で受験者数はおよそ4割も減少した。この傾向が続けば将来的には警察力の維持に重大な影響を及ぼすことも考えられるため、府警では採用活動を重視する。就職活動を控えた高校生や大学生だけでなく、より若い人材にもアプローチ。「似顔絵捜査」といった実践的なプログラムを小学校で開催し、理解の醸成に努めている。
10月9日、大阪府警鑑識課に所属し、似顔絵捜査員や警察犬指導手と呼ばれる専門の警察官ら約20人が貝塚市の市立葛城小学校を訪れた。
グラウンドに集まった児童や認定こども園の園児ら約130人を前に、まずはラブラドールの警察犬「チャム号(雌、5歳)」が、軽快な動きを披露。ハンドラー(警察犬指導手)の指示に従って障害物を飛び越え、ハシゴを上り下り。続いて、逃走中の犯人が隠した拳銃を探し出すという想定のもと、手の臭いを手がかりに拳銃を見つけた。警察犬の優れた嗅覚に魅了された子供らは「すげぇ!」などと歓声を上げた。
体育館では、事件発生直後に現場へ駆け付け、被害者から聞き取った犯人の顔や服装といった特徴からイラストを作成する似顔絵捜査の専従班「似顔絵係」による実演も行われた。
犯人を目撃した児童が捜査員に特徴を伝え、似顔絵を完成させるという内容。捜査員は「どんな輪郭だった」などと児童から丁寧に顔の特徴を聞き取り、男の似顔絵を体育館のスクリーンに映し出した。
絵を見た児童らが体育館にいた男性教員を指さすのと同時に、男性教員は体育館から逃走。茂みの中に隠れていたところを警察犬に発見され、警察官らによって取り押さえられた。
プログラム終了後、6年の川崎謙心(けんしん)君(12)は「警察がいつも頑張ってくれていることがわかった。僕も人助けをする警察官になりたい」と語った。
警察官の採用を所管する府警警務課によると、警察官採用選考の受験者数は記録が残る平成25年度以降、30年度の1万749人をピークに減少が続く。令和5年度は5839人と、5年間で約4割も減った。同課担当者は「適齢人口の減少に加え、企業の賃上げなどで人材が民間に流れてしまったのでは」と分析する。
今回、警察の活動に触れた児童らから鑑識課には後日、活躍する警察官の姿を描いた手紙が、たくさん届いた。感謝の気持ちなどがつづられていたといい、鑑識課の担当者は「警察官の仕事も将来の夢にしてもらえたら」と願っている。(鈴木源也)