令和7(2025)年度、各地の国公立大や私立大で情報系やデジタル系の学部が相次いで誕生する。国公立では秋田大が情報データ科学部を設け、神戸大は工学部の情報知能工学科をシステム情報学部として独立。私立では関西大がビジネスデータサイエンス学部を新設する。なぜいま大学は新しい学部を設置するのか。令和7(2025)年4月に開学以来初の理系学部となる理工学部を開設する追手門学院大(大阪府茨木市)の真銅正宏学長に狙いを聞いた。
「これまで学部の中で文理の融合を進めてきたが、いよいよ本格的に大学全体で文理を超えた教育に乗り出す」
真銅学長は理工学部を新設する意図をこう説明する。
追手門学院大は近年、国際学部、文学部、法学部を相次いで開設し、総合大学として学部を充実させ、12年連続で総志願者を増やしている。
また、文系、理系の枠を超えた教育を掲げ、経営学部に「情報システム専攻」、心理学部に「人工知能・認知科学専攻」、文学部に「美学・建築文化専攻」を設けるなどし、文系の学部のなかに理系的な要素を取り入れた教育・研究環境を整えてきた。
この流れをさらに押し上げようというのが、今回の理工学部だ。追手門学院大では理工学部を新設する令和7(2025)年度を「第二の開学」と位置付けている。
新設する理工学部は数理・データサイエンス学科、機械工学科、電気電子工学科、情報工学科で構成。理学と工学の視点を併せ持って実社会で応用できる思考力と、異分野の技術者と協働できる力を育み、これからの社会の構築を支える技術者の輩出を目指していく。
一方、追手門学院大は茨木市内に2つのキャンパスを構えるが、理工学部の新設と足並みをそろえて茨木総持寺キャンパスに新校舎を建設し、大半の学部を集約。特に、理工学部を含む1年次の学生全員がこのキャンパスで学ぶ。地上6階建ての新校舎は文系と理系の学生を交流させることで新しい発想を生み出そうという仕掛けだ。教室と研究室を同じフロアに配置するほか、全長250メートルもの長さの廊下を「イノベーションLAB」と名付け、学生らの交流を生み出す場とする。ここでの様々な出会いをイノベーションの創出につなげたい考えで、真銅学長は「実験的な試みだが、どのような交流とコラボレーションが生まれるのか楽しみ」と〝化学反応〟を期待する。
同大では教育のDXにも力を入れており、学生や教職員に情報を提供するアプリを独自に開発し、学生の学修状況などのあらゆるデータを収集する管理システムも整備。進路などのデータとともに「見える化」することで学生の行動変容を促していく。
「これからの時代は学ぶ内容もどんどん変わっていき、知識も古くなってしまう。大学では知識を詰め込むのではなく、学び方を身につけてほしい。そうすれば、卒業してからも変化に合わせてアップデートすることができ、生涯にわたって成長し続けることができる」と真銅学長。学部の新設には、文系や理系といった枠にとらわれず、新しい時代に対応できる学生を育てていくという大学側の意気込みがあるようだ。