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埼玉県立高の共学化「主体的に推進」 時期明記せず、男女共同参画の視点では判断せず

産経ニュース 2024年8月22日 20時46分

埼玉県教育委員会は22日、県内12校の男女別学高校の共学化について、「主体的に共学化を推進していく」とする報告書をまとめた。共学化の具体的な時期や校名は明記しなかった。

県内137校の県立高校のうち、男女別学校は、男子進学校の浦和高校や浦和第一女子高など。県教委は報告書に「高校の3年間を男女が互いに協力して学校生活を送ることには意義がある」と共学化の方向性は明記した。少子化や教育ニーズの多様化などを理由に挙げた。

県教委は記者会見で、男女共同参画の視点を踏まえた判断だとの見方を否定。日吉亨教育長は「共学校を選択できるので課題は感じていない」と話した。時期を明示しなかった理由については「意見交換などを丁寧に進めていく必要があるため」と説明した。

共学化の検討は令和4年、県男女共同参画苦情処理委員に「県立の男子高が女子の入学を拒んでいるのは、(国連の)女子差別撤廃条約違反だ」との苦情が寄せられたのがきっかけ。同委員は5年8月、県教委に「共学化が早期に実現されるべきだ」と勧告し、1年以内の報告を求めてきた。

これを受け県教委は、男女別学校の保護者や卒業生、共学化を求める市民団体などから意見聴取を開始。「別学校、共学校それぞれを選択できる状況とすべきだ」との声や「税金で賄われている学校に性別によって入学できないのは、教育の機会均等に反する」との指摘を受けた。

また、県内在住・在学の中高生と保護者に、記名アンケートを行った結果、共学化賛成は中学生で18・7%、高校生で7・8%にとどまった半面、中学生の56・2%、高校生の33・2%から「どちらでもよい」との回答を得た。一方で「伝統的な校風など特色が失われる」などと別学の存続を求める意見も根強く、存続を求める意見書の提出や署名活動なども行われた。

今回の県教委の報告書を受け、共学化反対の活動をしていた浦和高校の卒業生(59)は「早期の一律共学化にならなくてよかった」と話している。

男女別学の公立高校は減少

男女別学の公立高は、少子化や男女共同参画の潮流などを背景に減り続けている。文部科学省の調査によると、昨年5月時点で男女別学かどうかにかかわらず、男子生徒のみが在籍するのは15校、女子生徒のみは30校。平成15年はそれぞれ28校、95校だったが、この20年で共学化が進んだ。

男女別学の県立高が埼玉県と同数の12校ある群馬県でも共学化の議論が出ている。山本一太知事は7月の記者会見で「大きな流れとしては共学化に進むということだと思う」と語る一方、「いろんな人の思いを受けとめながら進める」とも述べ、賛否双方の意見を踏まえて慎重に合意形成を図る意向を示した。

宮城県は平成22年度までに「社会の在り方を反映する学校は男女が共に学ぶ方が自然」などの理由から県立高をすべて共学化。福島県や秋田県でも共学化を終えている。

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