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東京・葛飾の区立中、修学旅行費を無償化 値上がり受け教育費負担軽減、広がりに期待

産経ニュース 2024年9月17日 20時59分

東京都葛飾区で区立中学校の修学旅行が無償化されることになった。物価高やインバウンド(訪日客)需要の高まりに伴う旅費の値上がりを受け、子育て支援の一環として独自に打ち出した。学校給食の無償化も全国的に広がりをみせており、少子化の一因である家庭の教育費負担を軽減する動きが注目されている。

「修学旅行の費用は大きいので、無償化によって保護者の負担を減らしたい」。葛飾区教育委員会の担当者は、無償化の狙いをこう説明する。

中3の修学旅行は2泊3日で京都や奈良を巡る。家庭で負担するのは、交通費や宿泊費、体験活動費など計7万円程度。来年度は、物価高などで8万円程度に値上がりが見込まれていた。

区は事業の見直しなどで財源を捻出し、生徒約2900人分に必要な約2億3200万円を来年度の予算に計上する考えだ。これまで一部を公費で支援してきた小5と小6の臨海学校や林間学校、中2の移動教室も完全に無償化する。

区独自の取り組みで、所得制限を設けず、全ての児童生徒を対象にするのは、23区で初めてだ。

参加できない子供「救済」

公益財団法人「日本修学旅行協会」の高野満博事務局長は「葛飾区相当の規模の自治体では珍しい。教育活動を充実できる」と指摘する。

大阪府豊中市や青森県南部町も、小中学校の修学旅行の無償化に乗り出している。修学旅行は学習指導要領で特別活動に位置づけられた教育課程の一環だが、家庭の経済的事情で参加できない子供も一定数いるとされる。無償化の動きが広がれば、そうした子供たちの救済につながる。

ただ、高野氏は「補助が自治体によって変わるのはどうか。国から一定の補助があってもいいのではないか」とも述べ、自治体間の格差拡大に懸念も示す。

東京都世田谷区は、修学旅行を無償化した場合、約5億円の財源が必要になると試算する。保坂展人区長は記者会見で「子育て支援全体の中でどこを無償化すべきか。(葛飾区の動きを)問題提起だと思って他の支出と見比べたい。基礎自治体(市区町村)だけが頑張るという構図にはならないと思うので、国や都(の動き)はどうか、しっかり見ていく」と話した。

少子化に歯止めをかける上でも、国や自治体の子育て支援策の充実は急務だ。ただ、修学旅行以外にも、ドリルなどの教材費や、学童保育の料金など支援が必要とされる項目は多い。教育にとどまらず、子供の医療費などの支援もニーズが高く、限りある財源の分配は悩ましい課題だ。

「給食費」は全国的に浸透

給食費の無償化は、全国的に広がりつつある。文部科学省の調査(昨年9月時点)によると、小中学校の給食を無償化している自治体は30・5%。平成29年度の4・4%から7倍近くに伸びており、自治体側の力の入れようが伝わる。

東京都では、都が半額を負担することで、23区は無償化されているが、市町村部は39自治体のうち28にとどまっている。無償化を促すため、補正予算で交付金を計上して支援を行う方針だ。

一方、給食実施の遅れが目立つ神奈川県。横浜市立中は、生徒が弁当を持参するか、業者のデリバリー弁当を給食として注文するかを選ぶ仕組みだ。令和8年度からは生徒全員に給食が提供される予定だが、無償化の早期実現は厳しそうだ。市教育委員会の担当者は「中学の給食費だけで44億円かかる」と話し、予算確保の難しさを指摘した。(山本玲、堀川玲)

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