大学入試で、英検など外部検定(外検)の成績を合否利用する学校が増加の一途だ。約10年前に国が活用促進を提言して以降、英語を巡る4技能(読む・聞く・話す・書く)の客観評価基準として浸透。当日の学科試験が免除となるなど、受験生のメリットは大きい。民間調査によると、昨年入試で採用した国公私立大は全体の6割を超えており、今年は過去最多となる見込みだ。
受験関連書などを発刊する旺文社(東京都)が、全国の国公私立大学(通信制のみの大学などを除く)の募集要項などを調査。前回(令和6年度入試)は全体763校中、60・6%に当たる462校が外検を入試に利用していた。
国公私⽴⼤別では、私立大の採用校が多い。入試種別(①一般選抜、②総合型・推薦型)を組み合わせると、最多は「私立大/総合型・推薦型」で314校。次いで「私立大/一般選抜」で258校、「国立大/総合型・推薦型」が49校だった(※①、②のどちらも外検利用しているケースを重複集計しているため、合計は462校にならない)。
「準2級」以上で選択肢拡大
採用されている外検の種類では、「英検」が①で98%、②が99%と、いずれも最多。「GTEC CBT」(①92%、②87%)や「TOEFL」(①79%、②76%)なども高水準だった。入試での利用方法は、「得点換算」が①で約7割とトップ。②では、「出願資格」としての活用が約5割と最も多く、「加点」や「判定優遇・合否参考」が続いた。
利用可能な最低限の検定レベル(最易レベル)別では、①で「英検2級」が約42%、「準2級」が約34%で併せて8割近くを占めた。②は、「2級」と「準2級」がともに約32%で全体の6割超。英検受験では、準2級以上の取得で選択肢が広がるといえる。
志願者掘り起こし策として定着
大学入試の外検利用を巡っては、平成26年、文部科学省の有識者会議が、グローバル化の進展に伴って「日本はアジアトップクラスの英語力を目指すべき」と指摘。小中高の英語教育の充実化などと併せ、英語4技能の習熟測定に適した外検を利用した入試を促進するよう提言した。
以降、採用する大学は顕著に増加。上智大や早稲田大など有力私大が先行して取り入れ、志願者数が増えたことも拍車をかけた。立教大では令和3年度から、一般選抜の全学部で外検利用可能となった。文学部の一部日程を除き、英語の独自試験は科されない
旺文社の調査では、調査開始した28年度以降、年に数十校程度のペースで拡大。今回(令和7年度入試)も増加傾向は続く見込みで、6年度を上回って過去最多になる公算という。
同社教育情報センターの石井塁さんは、「現在集計中だが、私立の一般選抜の伸び幅が大きい。定員割れを起こしている私大も多い中、新たな志願者の掘り起こし策として外検利用が広がっており、今後も増加傾向は続くのではないか」と分析する。
受験生のメリットは大きい。例えば「得点換算」では、英検2級で英語試験の得点80点、準1級で100点などと判定される。大学の独自試験を受けることが可能なケースもあるが、その際は、どちらか高いほうが採用される。「もし独自試験に失敗しても大丈夫という安心感を持って臨める」(石井さん)。
一方、国立の一般選抜では未導入校がまだ大半だ。石井さんは、「受験生にとっては、ここのカテゴリが拡大していくことが、在学中の英語学習のモチベーションとして非常に大事」と指摘。地方在住者では、そもそも近くに外検の試験会場がないなど地域格差があるともいわれており、「そうした点を国立大側が考慮し、入試活用に二の足を踏んでいる可能性もある。国を含め、何らかの取り組みを期待したい」としている。