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物価高「1日1食で体重7kg減」、猛暑でクーラー使えず…あしなが遺児学生の厳しい現実

産経ニュース 2024年11月25日 11時0分

遺児らに奨学金を給付する「あしなが育英会」による調査で、親が亡くなるなどした困窮家庭の9割以上が「収入が物価上昇をカバーできない」と回答し、物価高騰に伴う負担感の大きさが浮き彫りになった。生後間もなく父親を亡くし、同会の奨学金で広島市内の私立大に通う男子学生も物価高のあおりで綱渡りの生活だ。それでも、学びを深められる環境に「まだ恵まれている」とも。今度は後輩遺児の「進学の夢」を後押しする形で恩返しをしたいという。

過去最低の採用率

男子学生は、広島工業大3年の小泉光悠(みつはる)さん(21)。10月中~下旬の4日間、広島都心の百貨店前で通行人らに募金を求めた。「皆さんのご寄付が大きな力となって遺児たちの進学の夢をかなえます」-。今、大学に通えるのも奨学金があったから、との思いを強くしつつ。

あしなが学生募金事務局中国ブロック代表も務める小泉さんによると、4日間で集まったのは約380万円。全額を同会に寄付した。全国の街頭では、9千万円以上の浄財が寄せられたという。

遺児らを取り巻く環境は厳しさを増している。同会によると、高校に入学する生徒や在学生からの奨学金申請は今年度、過去最多の3487人に上った。だが、資金不足のため採用できたのは1538人にとどまり、採用率は過去最低の44・1%だった。

あきらめたくない

「希望者の半分にも届けられていない。生活苦の家庭がそれだけ多い」と危機感を募らせる小泉さん。自身が物心をつく頃には父はおらず、母と双子の弟との3人暮らし。母はスーパーの品出しのパートで厳しい家計を支えていた。

そんな生活が当たり前と思っていたが、徐々に他の子と「違う」と感じた。中学生にもなれば、おしゃれに気を使いたい年代だが、はやりの服は高くてとても買えない。野球部でも、入部当初に買ってもらったグラブを引退まで大切に使った。

「就職を前提に考えていた」といい、地元の工業高校へ。次第に「もっと勉強したい」との思いを抑えられなくなる。弟も進学希望で、高校3年の春には兄弟で大げんかした。これ以上、母に負担は掛けたくない、との思いは一緒。でも、自分だけが進学をあきらめたくない。

そんなとき、母が提案してくれたのが、同会の奨学金だった。おかげで小泉さんは広島工業大へ、弟は福岡の私大へ進学できた。もっとも、同会から給付される1カ月あたりの奨学金は6万7千円の寮費だけで「ほぼ消える」(小泉さん)。物価高で寮費は入学時より5千円以上も値上がりしたという。

昼食すらとれず

居酒屋などのアルバイトで多い月で7、8万円程度は稼ぐものの、ヨット部での活動もあり、金銭的な余裕はない。昼食も1週間のうち、半分はとらない。「コンビニのおにぎり1個が200円近く。もったいなくて」。節約のため猛暑の今夏もクーラーを使ったのは数えるほどだった。

それでも、学びたい学問を学べる環境に充実感を感じる。将来は機械系のエンジニアとして海外の拠点で働くのが夢だ。途上国の若者支援に携わりたいという。

「大学で未来が広がった気がする。困窮家庭の子は幼くして家庭環境を理解しているから相当大人びている。『社会ってこんなもの』と抑え込みがちだが、可能性を狭めないためにも、夢をあきらめないでほしい」。多く人とこの思いを共有できれば、と考えている。(矢田幸己)

7月に実施したあしなが育英会の調査では、同会の奨学金を受ける保護者3107人から回答があった。回答者の属性として、世帯年収210万円未満が61・5%を占めた。

収入と物価のバランスを問うと、物価上昇をカバーできるだけの収入増があったと答えたのは2・5%にとどまり、「わからない」を除けば、94・2%がカバーできないていない状況だ。また、「昨年以上に物価高の影響を受けていると感じるか」との設問には、99・6%が「感じる」と回答した。

調査の自由記述欄には「食事は1日1食か2食になり、子供は体重が7キロ痩せた」(40代母親、東京)、「ドクターストップがあっても無理やり働いている」(50代母親、富山)など切実な声が寄せられたほか、がんを患っているのに治療費を工面できず、ステージⅣ(もっとも進行した状態)になったと明かす40代母親(三重)もいた。

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