千葉県教育委員会は22日、県立高校2年(当時)の女子生徒が令和5年10月に教諭との関係に悩んだ末に自殺した事案があり、有識者による第三者調査委員会の調査結果を公表した。自殺の背景について「生徒が何度も発信したSOSをすべて見逃し、度重なる無反応が生徒を精神的に疲弊させた」と断じ、学校側の対応を問題視。冨塚昌子教育長は記者会見で謝罪し、関係教諭らを減給処分とした。
作文に「おかしくなる」
生徒が自殺した事案はこれまで非公表だった。県教委は「遺族の思いを尊重して対応してきた。公表で学校や本人が特定されることを遺族は気にしており、遺族と対話続ける中で、このタイミングになった」と理由を説明した。
第三者調査委の調査結果などによると、生徒は自殺する5カ月前からSOSを発信していたが、すべて見逃されてしまった。
最初のSOSは5月のいじめアンケートだった。30代の英語教諭は、生徒を起立させて答えられるまで座らせないという授業スタイル。英語が苦手で起立したままの生徒は「みんなの前で恥ずかしい思いをするので英語の授業に出たくない」と記した。
7月の授業評価アンケートでは「生徒のことを侮辱するような発言が多数みられた。単語テストでは『こんなの覚えられないやつは中学生以下だ』といわれた」と訴えた。9月の作文には「英語の授業が原因で精神がおかしくなる。ガチで先生変えて欲しい」「本当に死ぬよ?」と、改善されない状況に強い不満をぶちまけていた。
追い詰められていたとみられる生徒は10月11日、英語の授業中にトイレにこもり、そのまま欠席した。それでも、20代の担任教諭は生徒に対し「今の状態なら俺は何もしてあげられない。自分で勝手にやってくれ。好きに進路を決めて好きに頑張ってくれ」と突き放すような指導をした。
「最後の砦(とりで)」ともいえる担任教諭からの叱責。生徒は翌12日、自宅を出たが、登校しなかった。そのまま帰宅せず、13日、自ら命を絶った。遺族や友人あてに遺書を残していたという。
担任、本人に聞き取りせず
生徒の一連の訴えに対し、学校側の対応は鈍く、調査結果は「いくつもの場面で不作為または不適切な指導に終始した」と断じている。
県教委児童生徒安全課の伊沢浩二課長が「適切に対応していれば、その後はいろいろな対応ができた。悔やみきれない」と話すのは、生徒が最初にSOSを発信したいじめアンケート。内容を確認した学年主任は「大丈夫なのか」と担任教諭にただした。ところが、担任教諭は生徒本人に聞き取りもせず「大丈夫です」と返答し、校長ら管理職にSOSは届かなかった。
誰か一人でも深刻に受け止めていれば救えた命かもしれない。「生徒に寄り添った指導を各学校に繰り返し伝えてきた。忸怩(じくじ)たる思い」。会見で謝罪した冨塚教育長は生徒指導のあり方について触れたが、現実はほど遠い。(岡田浩明)