環境省などが29日発表した、水道水に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の全国調査では、今年度は9月までの時点で国の暫定目標値を上回った事業はなかった。しかし目標値に近い数値が出た地域もあり、河川や地下水をめぐる別の調査では目標値を上回る報告が続く。消費者に不安が残るなか、国内では浄水器や土壌浄化技術の開発など、官民での対策が進められている。
家庭向け浄水器の販売も
水処理大手の栗田工業は10月、PFASを取り除く家庭向け浄水器の販売を始めた。工場向けに開発してきた不純物の除去技術を応用した。浄水器は蛇口に直接取り付け、活性炭と不織布で取り除く仕組み。昨年、インターネットで試験販売を行うと、売れ行き好調だったため、店頭販売に乗り出した。
ただPFASは本来、水源や土壌の段階で除去されるのが望ましく、同社では「不安に感じる人が多く商品を出したが、永続的に売れるものだとは思っていない」としている。
土壌の化技術開発に着手
環境省はPFASの代表物質「PFOA」と「PFOS」の合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)とした暫定目標値の規制強化について、29日は姿勢を明らかにしなかった。しかし今後、努力義務だった暫定目標値が水道法上の「水質基準」に格上げされ、改善が義務化される可能性もある。
清水建設では昨年、日本より規制が先行する米国で、PFASを含んだ土壌を浄化し、地下水の汚染を防ぐ技術の開発に着手した。PFASがついた粒の細かい土を特殊なふるいにかけたうえで、残った土のPFASを泡に吸着させて取り除く。試験では含有量の約99%の除去に成功。米国で事業を実用化したうえで、日本の将来の規制強化にも対応する。
コストなど課題
汚染の除去はコストを抑えつつ環境への負担を減らす必要がある。環境省では昨年度、沖縄県宜野湾市で地下水からPFASを除去する実験を行った。民間から応募があった技術で、地下水をくみ上げ、粉末状の活性炭をつけたフィルターを通して濾過(ろか)するものだ。
一定の成果があり、運用コストは「水1立方メートルあたり13・7円」と算出できたが、初期投資、フィルター交換など全体的なコストの洗い出しが課題となった。
環境省が8月に開いた有識者会議では、委員の1人が汚染除去について「コストを最小化する処理方法、(機器などの)設計はまだまだ知見が十分に蓄積されているとは言い難い」などと指摘。環境省に情報収集の強化を求めた。(織田淳嗣)