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犬も歩けば N電を守ろう! 最古の電車を後世に クラウドファンディングで修復へ寄付募る 京都・平安神宮

産経ニュース 2024年8月16日 14時0分

「日本最古の電車を守ろう!」と、京都市の平安神宮に長年展示されてきた「京都電気鉄道電車」(京都市交通局二号電車)の修復・保存をめざすクラウドファンディング(CF)が始まった。日本初の路面電車で、車両は明治44年の製造と現存最古。全国で唯一、重要文化財に指定されている。修復後は正門・応天門のすぐそばで展示公開する予定で、同神宮は「鉄道発展の礎を築いた文化財を守るためにご支援を」と呼び掛けている。

車両(通称・N電)は、明治28年に国内初の公共電気軌道を開業した京都電気鉄道(京電)の路面電車。

歴史的には、明治維新で首都が東京に移り、人口が約3分の2に減った京都の衰退を心配した市民らから、インフラ整備や教育の近代化、産業振興などを求める声が上がった背景がある。

インフラ整備では琵琶湖疏水(そすい)の建設、その水力を利用した蹴上発電所の完成があり、京電の開業へとつながった。

同年、平安京をひらいた桓武天皇を祭神とし創建されたのが平安神宮だ。その〝縁〟から、大正時代に京都市電の一部となり昭和36年に市電北野線が廃止となった際に、同神宮が車両をもらい受けて展示することになったという。

その後、有名な「紅しだれ桜」や、平安時代の『源氏物語』、『枕草子』に登場する植物を植栽した「平安の苑」などで知られる「南神苑」の一角に覆屋を設け、車両が設置された。

さて、いかにもレトロな雰囲気のいわゆる「チンチン電車」だが、令和2年、国の重要文化財に指定されたのは知らなかった。

聞くと、明治44年と現存する電車の中で最も製造年代が古く、「先駆的な初期の路面電車として、日本の交通史や科学技術史において非常に価値が高い」と評価されたという。

製造されたのは堺市の梅鉢鉄工場。長さ約8メートル、幅約2メートル、高さ約3メートルで、車体は木製だ。台車は米・ブリル社製で、電動機は当初は米GE社製だったが後に神戸製鋼所鳥羽工場製にと、国産に取り換えられた。そんな日本の産業史の一部も垣間見ることができる。

鉄道発展の礎を築いた最古の電車「京都電気鉄道電車」を守る―。

今回そう題して、クラウドファンディングに挑戦しているのは、老朽化が進む電車の修繕費用と、応天門西側へ移動し新たな覆屋を造る費用捻出のためだ。周辺整備なども含めて2億円以上かかるうち、第一目標を5千万円に設定した。

多くの神社仏閣同様、新型コロナウイルス禍での資金難はいまだ続いている。その不足を補い、広く一般や鉄道ファンに呼びかけて歴史ある電車を守りたいという。

写真を見ると分かるだろうか。木製車両の窓枠やレトロな電灯、シート、つり革など、昔のまま残されていることに価値があるという。ただ…。

「ご覧のように、座席生地が破れていたり、つり革が切れて落ちてしまっていたり。内外の塗装も剝がれている部分が多く、その修復が急務です」(同神宮)

文化庁や府、市に有識者を加えて保存修理委員会を発足。現在、修理内容と今後の保存計画を検討中だ。

また修復後は、より多くの人に見学してもらえるよう、現在の神苑内(有料区画)から正門脇の無料区画へ移転して展示する予定で「近代日本の発展に寄与した歴史遺産を広く後世に伝えていきたい」と話している。

支援のリターンにも注目したい。

「電車特別朱印」(5000円~)や「梅鉢鐵工場」と記され梅の印章が入った「銘板」を模写した缶バッジ(1万円)、「電車広告レプリカ」(路線図または運賃表、3万円)といった鉄道ファンにはうれしい品も。案内付きの「修繕前の電車内見学」(3万円)は実際に車両の中を見ることができる。

中でも目玉は「芳銘板記載」(10万円)だろうか。修復された電車とともに芳名板に名前が残る。支援は10月23日まで。

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