薬師寺(奈良市)の境内で奈良時代の回廊跡の北西隅が出土し、中枢伽藍(がらん)を囲んだ回廊は東西約123~124メートル、南北約113~115メートルの規模と確定したと、奈良文化財研究所が7日発表した。西側は東側より2メートル長く非対称だったとみられ、平安時代の寺の記録「薬師寺縁起」の記述を裏付けた。
薬師寺では伽藍復興を進めており、これまで北西以外の3隅が出土。回廊の規模や構造を知るため、今回残る北西隅に当たる位置を調査した。
その結果、14基の礎石の穴が見つかった。据えられた凝灰岩の位置から回廊は中央に壁がある「複廊」と分かり、基壇上に建てられた礎石建ち、瓦葺(ぶ)きの建物(幅約6メートル)だったとみられるという。
回廊は他の部分の調査で当初は藤原京(奈良県橿原市など)にあった薬師寺と同様に通路が1つの「単廊」で造り始めたが、途中から計画を変更し複廊で完成したことが分かっており今回、北西隅でもこれを確認した。
4隅を確認したことで各回廊は西側約115メートル、東側約113メートル、南側約123メートル、北側約124メートルと確定した。
薬師寺の回廊は奈良時代以降、倒壊・焼失と再建を繰り返し、現在は大部分が復興されている。
担当した同研究所の和田一之輔・考古第一研究室長は「回廊の遺構は良好に残っていた。東西対称に造るのが美しいはずなのになぜ非対称なのか検討課題となる」と話している。
現地見学会は9日午前11時~午後3時に行われ、拝観料が必要。