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宮内庁「楽師」による雅楽演奏会、10月に皇居で 22年ぶりに日本古来の歌舞を披露

産経ニュース 2024年7月25日 20時30分

皇居・東御苑にある宮内庁楽部で10月、「秋季雅楽演奏会」が開催される。春と秋に一般の人も招く恒例行事で、今月末まで観覧者を募集している。今回は、22年ぶりに日本古来の歌舞が披露される予定で、同庁楽部の担当者は「平安時代の時の流れを感じてもらえたら」と説明。皇室のもとで受け継がれてきた雅楽の歴史と、伝承の裏側を取材した。

「融合」の芸術

雅楽は、日本古来の歌舞と、アジア大陸からの楽舞が合わさった古典音楽。5世紀ごろから流入してきたアジア大陸諸国の外来音楽を日本化したり、日本古来の歌舞に外来楽器を取り入れたりした「楽制改革」と呼ばれる取り組みなどによって、10世紀ごろに現在の形が完成したとされる。

雅楽はその起源により、大きく3つのジャンルに分けられる。1つは「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」と呼ばれ、日本に昔から伝わるもの。2つ目は大陸系の楽舞で、さらに細分すると中国大陸のものは「唐楽(とうがく)」、朝鮮半島に由来するものは「高麗(こま)楽」と呼ばれる。そして3つ目は、平安時代に国風歌舞と大陸系の楽舞が融合した「歌物(うたいもの)」。こちらも民謡を歌詞とする「催馬楽(さいばら)」と、漢詩を歌詞とする「朗詠(ろうえい)」に分けられる。

演奏形態も、楽器を演奏する「管絃」、音楽と共に舞う「舞楽」、楽器の伴奏で歌う「歌謡」の3つに分類される。

宮廷文化でもある雅楽の伝承を担ってきたのが、宮内庁楽部の「楽師」と呼ばれる人たちだ。現在は24人おり、身分は国家公務員。日々稽古に励み、主に園遊会や宮中行事でその腕前を披露しているが、地方や海外でも公演を重ねている。昭和30年には、宮内庁楽部の楽師が演奏する雅楽が、国の重要無形文化財に指定された。

ちなみにあまり知られていないが、楽師は外国の賓客を招いた昼食会などでクラシックの演奏も行うため、洋楽器もたしなんでいる。

次代育成も担う

楽師は、かつては『楽家』と呼ばれる家系で代々受け継がれてきた。楽部の首席楽長、多(おおの)忠輝氏もその一人だ。

ところが近年、生活様式の変化などもあり、楽家出身者だけでは維持が難しい状況だ。次世代の楽師育成のため、楽部では不定期に行う採用試験を経て、楽師を目指す子供を「楽生」として受け入れており、多くは小・中学校卒業後から通っている。楽師になるのに7~9年程度かかるといい、現在、10~20代の6人が修業を重ねている。多氏は、「楽部は、雅楽の教育機関になっている」と話す。

コロナ禍では、感染予防のため練習の人数制限や演奏会の中止を余儀なくされた。令和4年秋、ようやく演奏会が復活し、多氏は「できなかった分を取り戻すには、同じ年数がかかる。やっと今、みんな元気になってきたと感じる」という。

これまで、演奏会の観覧は往復はがきのみで応募を受け付けていたが、10月の演奏会では、初めてインターネット受け付けを導入。さらに、家族連れなどがグループでも応募できるようにした。

見どころの1つが、22年ぶりに披露するという「神楽歌」だ。日本古来の国風歌舞の一種で、多氏は「派手さはないが、非常にわびさびが効いている」と表現。演奏会について「雅楽は非常にゆっくりとした音楽だが、その中に、平安時代の時の流れを感じてもらいたい」と話している。(吉沢智美)

10月18日から3日間、皇居で開催。各日とも午前・午後の1日2回公演。入場無料。各回の定員は300人で、小学生以上が対象。

インターネットやはがきで、希望回などの必要事項を記載して申し込む。1グループ4人までで、複数回の申し込みは無効。今月31日締め切り(当日消印有効、ネットは午後11時59分まで)。希望者多数の場合は抽選となり、はがきの場合は当選者のみ、ネットの場合は当落者両方にメールで通知される。

詳細は宮内庁ホームページ、またはテレホンサービス(03・3284・6780)。

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