秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さまは12日、お一方で京都府舞鶴市を日帰りで訪れ、先の大戦後の旧ソ連によるシベリア抑留の歴史を伝える「舞鶴引揚記念館」などを見学された。抑留体験などを語り継ぐ活動をする高校生らの案内を受け、強制労働に従事させられた抑留生活の資料や、収容所を再現した部屋を見て回られた。
同市は昭和20~33年、シベリアから引き揚げてきた約66万人を迎えた。悠仁さまは、引き揚げ当時の舞鶴港を再現したジオラマの前で「向こうの港からどれくらいの距離が」とご質問。抑留生活を余儀なくされた男性が日々の生活をシラカバの皮につづった「白樺日誌」については「見つかったらすぐに没収されてしまうこともあるわけですよね」と感想を述べられたという。
引き揚げ者を出迎えた女性らと懇談する機会も設けられ、当時の様子について話を聞いたほか、語り部活動を行う高校生には、これまでの活動に謝意を示されたという。
記念館は抑留や引き揚げの実情を後世に伝える目的で昭和63年に開館。平成27年には所蔵資料が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録された。
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被爆地や沖縄ご訪問も 先の大戦の記憶ご継承
皇位継承順位2位の秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さまは、これまでも被爆地や地上戦で多くの犠牲者を出した沖縄など、先の大戦の関係先へ足を運ばれてきた。戦中・戦後の国民の苦難を伝える施設への訪問からは、上皇さま、天皇陛下、秋篠宮さまに続く次世代の天皇として、先の大戦の記憶の継承に向き合おうとするご姿勢がうかがえる。
悠仁さまが今回訪問された舞鶴引揚記念館には平成29年4月、秋篠宮ご夫妻も訪れ、抑留経験者らと懇談されている。
「本で見て知っているもの以上に大変過酷な生活をしていたということについて、改めて認識する機会になった」。秋篠宮さまは同年の誕生日会見でそう振り返り、現地を訪れて関係者の話に直接、耳を傾ける意義に言及された。
悠仁さまも私的に各地の慰霊碑などを訪れており、25年12月にはご夫妻とともに、沖縄戦の戦没者名が刻まれた沖縄県糸満市の平和祈念公園の石碑「平和の礎」を見て回られた。28年12月には長崎市の爆心地公園で原爆落下中心地碑にご供花。長崎原爆資料館などを見学し、被爆した男性から体験談を聞かれている。
30年8月には秋篠宮妃紀子さまとともに広島市の平和記念資料館を訪れたが、紀子さまは同年、同席した秋篠宮さまのお誕生日会見で、悠仁さま自身が「広島を訪れて、資料館や関係者から話を聞いてみたい」と望まれていたことを明かされた。
側近は「今回のご訪問は、舞鶴引揚記念館側から悠仁さまへの願い出があり、悠仁さまも関心を持たれていたようだ」と話している。