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洋上風力、脱炭素電源導入拡大の本命 浮体式でゲームチェンジ挑む、早期の技術確立が焦点

産経ニュース 2024年9月5日 11時0分

政府が再生可能エネルギーなど脱炭素電源の導入拡大を探る中、四方を海に囲まれた日本では洋上風力発電への期待が大きい。なかでも、風車を洋上に浮かべる「浮体式」は、2030年代に本格的な普及期に入ると見込まれ、量産技術などの確立が急がれている。

日本は国土の面積は世界61位にとどまるものの、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積では世界6位。洋上風力発電の設置余地は大きく、日本風力発電協会は、陸上風力の3・5倍に上ると試算する。

政府は、国内の洋上風力発電の発電能力を30年までに原発10基分に相当する1千万キロワット、40年までに3千万~4500万キロワットまで高める目標を掲げている。政府の洋上風力産業ビジョンによると、40年には欧州、中国に次ぐ世界第3位の規模となる可能性がある。

設置場所、EEZに拡大へ

30年の目標に向けては、現在主流の海底に土台を固定する「着床式」の計画が進んでいる。ただ、日本には着床式に適した遠浅の海域が少なく、40年の目標達成には水深に関係なく発電設備を置くことができる浮体式の導入が欠かせない。政府は洋上風力の設置場所を現行の領海内からEEZに広げる関連法案を秋の臨時国会に提出する予定だ。

もっとも、浮体式は世界的に実証段階で、量産技術が確立していない。発電コストの低減や、大量生産に向けた技術開発など課題は多い。大手電力や商社は3月に基盤技術の共同開発を行う技術研究組合を設立。政府も6月、国内2拠点の浮体式の実証に最大850億円の支援を決めるなど、官民が技術確立を急ぐ。

産業の裾野広く

風力発電を巡っては着床式で先行する欧州に技術標準を握られ、国内風車メーカーが事業から撤退した経緯がある。だが、浮体式は設備を海に浮かべる造船技術を風力発電と組み合わせる必要があり、新技術の確立で先行できれば巻き返しも可能。資源エネルギー庁の担当者は「ゲームチェンジできる」と意気込む。

風力発電の構成部品は数万点に上り、産業の裾野が広い。日本は現状でその調達の多くを海外に頼るが、政府は40年までに国内調達比率を60%まで高める目標も掲げている。浮体式の技術確立は、経済安全保障や国際競争力の観点からも重みを増している。

(万福博之)

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