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阪神大震災の引き金 有馬温泉の地下60キロで起きた洪水か 筑波大の同位体分析で浮上

産経ニュース 2024年9月2日 18時30分

平成7年に起きた阪神大震災は、直前に有馬温泉(神戸市)の地下約60キロで生じた洪水のような現象が引き金となっていた可能性が、筑波大による温泉水の同位体分析で浮上した。温泉水が含む地下での洪水に由来する水が、約1年前に急増していたことも判明。温泉水の継続的な調査を行えば、巨大地震への備えに役立つかもしれない。

有馬温泉の水は塩分濃度が高く、太平洋側から地下約60キロに沈み込んだフィリピン海プレート(岩盤)から、元は海水だった水が上昇して入り込んでいると指摘される。

チームは、プレートから上昇した水が含む酸素と水素について、同じ元素でも質量が異なる安定同位体の含有比を計算。雨水に由来した分を除く温泉水の同位体比と一致し、プレートからの水の流入を実証した。

次に、昭和35年以降の温泉水のデータを基に、プレートからの水の流入量を分析。ずっと減少が続いていたが、阪神大震災の前年に当たる平成6年から突発的に増加し、十数年にわたって多い状態が続いていた。増加量は最大で年間約42万トンに及び、チームは地下深部で洪水のような現象が起きたとみている。

プレートから大量の水が急激にあふれ出たり、温泉への上昇経路の目詰まりが破裂したりしたとみられる。これにより、阪神大震災の震源断層がずれ動きやすくなり、地震の引き金となったことが示唆されるという。

温泉水の継続的調査で地下深部の洪水発生を把握できれば、地震の備えに役立つ可能性もある。山中勤・筑波大教授(水文学)は「南海トラフ巨大地震の想定震源域付近にも、プレート由来水を含む温泉がある。温泉の温度や色、成分濃度に変化が生じた場合は注意が必要だ」と話した。

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