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標高2060メートルの「天空の鏡」、八方池包む白雲に〝緑の島〟が浮かぶ 長野・白馬 行ってみたい 水のある風景

産経ニュース 2024年8月8日 10時0分

スノーシーズンには世界中からスキーヤーやスノーボーダーが訪れる長野県白馬村は、実は春から秋にかけてのグリーンシーズンも人気だ。北アルプスの唐松岳(からまつだけ)(2696メートル)から延びた八方尾根にある「八方池(はっぽういけ)」は、白馬屈指の絶景ポイントのひとつ。奇跡の風景を見たくて、晴れの予報を信じ登ってみた。

白馬八方尾根スキー場の3つ目のリフトの乗り場がある黒菱平(標高1680メートル)から上部は、中部山岳国立公園に指定された日本を代表する自然景観が広がる。ここにしかない高山植物や、特別天然記念物のカモシカやライチョウなど、貴重な動植物が生息している。

八方池は、リフトを降りて1時間半ほど歩いた尾根道の脇にある。雪に押し出された土砂が堆積した場所に、雪解け水や雨水がたまってできた天然池だ。標高2060メートルにあり、「天空の鏡」とも「神秘の池」とも呼ばれる。

池の氷がすべて解けるのを待って、6月下旬に午前8時の八方ゴンドラリフトに乗った。40分後には歩き始めのスタート地点、標高1830メートルの八方池山荘に到達。そこに、白馬三山(白馬鑓(やり)ケ岳、杓子(しゃくし)岳、白馬岳)が水面に映った案内板があった。この風景を自分の目で見てみたい。

岩がゴロゴロした登山道と木道を、汗をかかない程度の速さで歩いていく。ほどよい斜度、見通しの良い尾根道で、小学生ほどの子供も元気に登っている。

八方池が右手に見えてきた。だが、その向こうにあるはずの山々は雲の中…。しかたなく、池のほとりのデッキに腰をおろして天気の回復を待つことにした。

雲は多いが風はなく、水面は極めて静か。池の端には「飯森神社奥社」の小さなほこら。雲は形を変えながらも晴れはしない。

待つこと約1時間。一瞬、日の光が差した。上下対象の雲の中に、ほこらを中心とする緑の島が浮いたような光景が広がった。

同じように「天気待ち」をしていた女性が「4回来て、北アルプスが映る奇跡の1枚が撮れたのは1回だけ。でも、きょうの雲もすごくいいのでは」と励ましてくれた。

白馬村振興公社山岳事業部係長の佐藤剛さんは「白馬三山は雲がかかりやすい山。晴れの予報でも、朝からすっきり見えることはそんなに多くない」と教えてくれた。

6月下旬に続き、7月、8月と、八方池を三たび訪れた。白馬連峰の全容を見ることはできたが、わずかな風でも水面が揺らぎ、なかなか「鏡」にはならなかった。「神秘」は、山よりも池にあるのだ。(石毛紀行)

八方池 八方池へは、3つのリフトを乗り継ぐ「八方アルペンライン」(大人運賃は往復3300円)で標高差1060メートルを一気に上がるのが楽。また、2つのリフトを乗り継ぐ「黒菱ライン」(同2000円)は、夏場のピークに午前4時半始発(黒菱第3ペアリフトのみ、同1200円)があり、朝だけの絶景を楽しめる。いずれのリフトも日によって始発が異なるので、ホームページで確認が必要。

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