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利根川の源流で緑とカヌーを楽しむ、夏の洞元湖一帯は「水のゲレンデ」 群馬・みなかみ 行ってみたい 水のある風景

産経ニュース 2024年8月6日 10時0分

夜半からの雨もやみ、風もなく鏡のように静かな湖面にカナディアンカヌーで漕ぎ出す。雨模様でもあり人の数は少なく、遠くではボードの上に立ちパドルを漕いで水面を進む水上スポーツであるサップを楽しむ少年たちの歓声だけが響く。あとは緑一色の山並みが続いている。

関東の水源でもある群馬県みなかみ町の北東部。水がめで有名な矢木沢ダムと美しさでは国内屈指の奈良俣ダムの下流、ちょうどVの字のように細長く横たわる洞元湖(どうげんこ)は、カヌーやサップを楽しむ場として愛好者の間で親しまれている。

奈良俣ダム直下近くの湖岸を出発。乗り込んだカナディアンカヌーは安定感があり、2人乗りの相方は男性ガイド。「鬼に金棒」と気を許してカメラのシャッターを押していたら、ガイド氏いわく「強風だと、沈没することもありますよ」。ライフジャケットは必携という。

とはいえ数分で慣れる。湖面に座って進むようなものだから、パドル操作ひとつで湖岸からは見えない場所へ自由に行ける。半島のような突端に立つ鳥居や湖面に横たわる枯れた巨木、その隙間を1メートル近い魚影がゆっくり浮いてきて、やがて沈んでいった。

洞元湖のVの字のちょうど曲がり部分に須田貝ダムがある。上流の2大ダムに比べ地味だが、昭和30年完成でみなかみ町内の大小7つのダムの中で最古参だ。このダムを背に、左手の矢木沢ダム、その人造湖の奥利根湖、さらに上流へ上っていけば、利根川の源流、群馬・新潟県境の大水上山(おおみなかみやま)(1834メートル)山頂付近に着く。

今は石碑が建つ利根川の源流を特定したのは、調査開始から60年後の昭和29年というから、須田貝ダム完成と大差なく、作業は難航したようだ。

それにしても、水をせき止めるダムの下流に、またダム湖やダムがあるというのも不思議な話で、須田貝ダムの下流にも藤原ダムなど2つのダムがある。要はそれだけ流れ込む水量が豊富ということだ。何しろ、みなかみ町の約9割が森林、緑のダムなのだから。

例えば洞元湖の奈良俣ダム直下付近には、ならまた沢川という急流が東から流れ込む。その流域は、11の美しい滝を配した「照葉(てりは)峡」という名所になっていて、急流に沿って「奥利根ゆけむり街道」が走り、尾瀬へとつながっている。

カヌーやサップは洞元湖以外にも奥利根、ならまたや藤原、赤谷などの湖でも実施している。さらに利根川を豪快に下るラフティング、支流では身ひとつで渓谷を下っていくキャニオニングなども行われていて、夏のみなかみ町は「水のゲレンデ」と化している。(風間正人)

洞元湖 洞元湖のカヌーツアー料金は午前、午後の半日コースで7000円から。業者や湖によって若干異なる場合がある。ラフティングやキャニオニングなども含め、詳細はみなかみ町観光協会(0278・62・0401)まで。同協会では、まろやかな軟水が特徴の源流水を無料で採水できる町内4カ所のポイントをインターネット上で紹介している。

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