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巨大な柱が林立する〝地下神殿〟 首都圏外郭放水路は縁の下で暮らしを守る 埼玉・春日部 行ってみたい 水のある風景

産経ニュース 2024年8月12日 10時0分

洪水を防ぐために建設された世界最大級の地下放水路、首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)。その醍醐味(だいごみ)を味わえるのが、地下水路のトンネルから流れてきた水の勢いを弱めて江戸川へスムーズに流すための施設である「調圧水槽」の見学会だ。首都圏外郭放水路を象徴する施設で、巨大な空間の中に鉄筋コンクリートの柱が林立する姿は〝地下神殿〟の異名を持ち、荘厳さは訪問者を圧倒する。

国土交通省によると、首都圏外郭放水路は中川中流部の国道16号の地下約50メートルにある延長6・3キロの地下放水路。貯水できる水の量は小規模なダムと同じくらいの約67万立方メートルという。

見学会は4コースあり、ウェブサイトもしくは電話で事前予約する。今回は、調圧水槽を見学できる「地下神殿コース」(定員50人、参加料金1人1千円、乳幼児不可)を取材した。

訪れたのは、夏が近づく6月下旬。国交省江戸川河川事務所の専門官が案内する中、階段を下りていくと、半分ほど進んだところでひんやりとしてきた。神奈川県から来た主婦(68)は「冷えると聞いていたので、カーディガンを着てきました」。

調圧水槽は奥行き177メートル、横幅78メートルで、高さは天井まで18メートル。林立する鉄筋コンクリートの柱は59本あり、周りにある地下水からかかる揚力により調圧水槽が浮き上がるのを防いでいる。底に着き、天井を見上げてみる。想像以上の巨大な空間は圧巻の一言だ。暗い中で59本の柱はほのかな電灯に照らされている。内部に水分が残っているときは霧状に立ち込めることもあり、幻想的で神秘的な風景だ。〝地下神殿〟と呼ばれるゆえんを体感した。

他の3コースも見ごたえ十分。調圧水槽の近くにある「第1立坑」を見学できる「立坑体験コース」(定員20人、参加料金1人3千円)は、高さ約70メートルの通路を歩く。転落などを防止する命綱となる安全帯の構造上、途中から引き返すことはできないため、高所が苦手な人は注意が必要だ。

見学会を終えた後は、地底探検ミュージアム「龍Q館」(開館時間は午前9時半~午後4時半)の2階展示室がお勧めだ。首都圏外郭放水路がどんな機能や役割を果たしているのかについて、模型やパネルで分かりやすく紹介している。

外に出て土手に上がると、江戸川の流れが眼前に広がる。首都圏外郭放水路は人々の暮らしを支える縁の下の力持ちであると同時に、その壮大さゆえに多くの人の関心を引き付ける観光資源に育ちつつある。(昌林龍一)

首都圏外郭放水路 調圧水槽へは、東武野田線南桜井駅から徒歩で約35分。車の場合は、東北自動車道岩槻インターチェンジ(IC)から約40分。見学会は4コースあり、事前予約制(小学生未満は参加できない)。個人は1~19人の予約が可能で、ウェブサイトもしくは電話(048・747・0281)で申し込む。参加料金はコースにより異なる(1人1000円~)。

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