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最高到達点は〝東洋一〟の112メートル、月山湖大噴水は大切な水の象徴 山形・西川 行ってみたい 水のある風景

産経ニュース 2024年8月9日 10時0分

山形県寒河江(さがえ)市から日本海側の鶴岡市に抜ける月山花笠(がっさんはながさ)ライン(国道112号)を走っていると、山間から突然、頂きを越える勢いで巨大な水柱が出現する。月山湖大噴水-。朝日連峰や百名山のひとつに数えられる月山(1984メートル)に抱かれた清流が、水と生命の源・西川町の夢を乗せて天高く噴き上がっている。

この流れは、松尾芭蕉が『おくのほそ道』に残した「五月雨をあつめて早し最上川」の支流・寒河江川。

東京・八王子出身の日本を代表するアーティスト、松任谷由実さんは幼少時、「育ての親」といわれる宮林秀子さん(故人)の故郷・西川町によく遊びに来た。川面を見ながら「あっ、サンマが泳いでいる」とはしゃぎ、星空を見上げては「雨の穴が開いている」と豊かな自然をそう表現したという。地元の人たちは、子供ながら卓越した才能に舌を巻いた。

ユーミンが見たであろう景色や、江戸期以降に豊富な砂金が取れたため「砂金川」といわれた寒河江川は、ダムの底に沈んだ。西川町で、ほぼ直角に曲がる暴れ川は周辺に洪水を引き起こした。治水と、過疎地域にありがちな電力不足を補うために平成2年、寒河江ダムが建設された。そして、そのダム湖に「水源の街」のシンボルとしてつくられたのが月山湖大噴水だった。

大噴水の最高到達点は112メートルで、東洋一、世界でも有数といわれる。「いまでも日本一ですが、噴水の能力的には高さ140メートルまで可能といわれています」と話すのは西川町歴史文化資料館の清野幸夫館長。

ダム建設で112戸の家が移転し、ダム湖の脇は国道112号が通る。寒河江ダムの高さは112メートルで、完成したのが平成2年11月2日。「そういう数字が、キーワードになっているそうです」(清野館長)

冬場のダム周辺は雪が多く、6メートルの高さまで積もることもしばしばで、「移転しなくても、近所がいなくなったら暮らすことが難しかった土地」(同館の倉石早季学芸員)。112戸の住民たちは町のために大切な土地を去り、寒河江市や山形市などに移り住んでいった。

水にこだわった町づくりのシンボルから仰ぎ見る霊峰・月山は、7月になっても雪をかぶり、神々しいたたずまいを見せる。大噴水には、世界に水の大切さを問い掛ける願いも込められているという。(菊池昭光)

月山湖大噴水 山形県西川町砂子関。直上主ノズルと8本の揺動拡散ノズルが設置され、季節ごとに打ち上げパターンを変えている。平日は午前10時から午後4時(休日は午後5時)まで、1時間(毎時00分ちょうどの時刻)ごと、平日7回、休日8回。1回当たり約15分間。今年は11月4日まで。JR寒河江駅から路線バスで月山銘水館に向かい、月山銘水館から町営バスでダム展望台へ(展望台は無料)。【問】西川町観光課(0237・84・0566)。

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