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アンパンマンの生みの親、やなせたかしさんの原点…緑豊かな高知で優しさに包まれる旅

産経ニュース 2024年11月21日 14時0分

NHKが令和7年度前期に放送予定の連続テレビ小説「あんぱん」は、「アンパンマン」シリーズで知られる絵本作家のやなせたかしさん(1919~2013年)と妻の暢(のぶ)さん(1918~93年)がモデルのドラマだ。10月下旬、やなせさんが幼いころを過ごした高知県のゆかりの地へ。やなせさんの優しい心に終始包まれた気分の旅だった。

初日、JR岡山駅から乗り込んだのは、本州と四国を結ぶ特急「南風(なんぷう)」として運転される「土讃線アンパンマン列車」。子供たちに人気のアンパンマンや仲間たちが数多く描かれ、岡山-高知駅間を1日5往復している。

アンパンマンと一緒に旅している気分に浸りながら、約2時間で南国(なんこく)市駅前町にある後免(ごめん)駅に到着。駅近くにある後免町商店街の「やなせたかしロード」を歩いた。

約400メートルの道沿いにアンパンマン、ジャムおじさんなどのかわいらしい石像が7体、あちこちに置かれている。印象的なのは、ばいきんまんがライバル、アンパンマンと並んで立っていること。「本当の悪人(=敵)はいない」というアンパンマンの世界観を表しているのだろう。

緑や石像に囲まれ

翌日は香美(かみ)市香北町の「やなせたかし朴ノ木(ほおのき)公園」へ向かった。緑豊かな環境に囲まれた、やなせさんと妻の暢さんが眠る墓地公園で、やなせさんの生家跡にある。

「一本の朴ノ木にぼくはなりたい 季節には はにかみがちに 風の中でゆれていたい」

やなせさんの言葉が刻まれた石碑を挟んで、アンパンマンとばいきんまんの石像がある。仲間の石像にも取り囲まれ、優しく楽しげな雰囲気が印象的だった。

公園から南西へ車で5分ほど行くと、「香美市立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム」がある。やなせさんの生前に建てられた美術館で、子供連れでいっぱいだった。

4階の「やなせたかしギャラリー」には、やなせさんの描きおろしや、アンパンマンの絵本の原画がズラリ展示されている。大型の作品も多く、迫力に圧倒される。ミュージアムは11月5日から来年3月28日まで改修工事のため休館中。再オープンが待ち遠しい。

フィギュアに挑戦

高知の魅力は他にもたくさんあり、かつおのたたきなど土佐料理もその一つ。一年中、果物狩りができる南国市廿枝(はたえだ)の西島園芸団地では、甘くて美味のメロンやスイカを味わった。

童心にかえれる場所は「海洋堂SpaceFactoryなんこく」(南国市大そね甲)。フィギュアメーカー「海洋堂」の製作工程の見学や色付け・ジオラマづくりが体験できる。

手のひらサイズの白いティラノサウルスの色付けに挑戦。体は肌色に近い茶色だろうと、黄色や白色の絵の具を混ぜ四苦八苦して色を作る。「いい色合いですね」という職員のお世辞(?)に気を良くしながら、何とか完成させた。

帰路は、奈半利(なはり)駅(奈半利町乙)から高知駅まで観光列車「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり『雄飛の抄』」を使った。乗り込んだ2号車「SORAFUNE」のデザインは、宇宙空間までつながる未来への「夢」がコンセプト。食事をとりながら、窓から太平洋の絶景を楽しんだ。

この間、考えていたのは、なぜアンパンマンが長く子供に愛されているか。いろいろ説はあるが、顔の一部を差し出し、おなかをすかせた人を助ける自己犠牲の精神が子供の心を打つのだろう。

〝究極の愛〟の物語を創ったやなせさんの偉大さが、夕日が海に沈む車窓の光景の壮大さとオーバーラップしてみえた。(山口暢彦)

■南国市と香美市 南国市は人口約4万6千人(10月末現在)、高知県中部にある県下第2の都市。高知龍馬空港は交通の要でもある。やなせたかしさんは小学2年から約10年間、南国市内の伯父の自宅兼診療所で暮らした。やなせさんの両親の出身地である香美市は南国市の東に隣接し、総面積の約9割を森林が占める。

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