政府は令和6年秋の叙勲受章者を3日付で発表した。長年の功績や貢献が認められた秋の叙勲の受章者たちは大きな栄誉を喜び、次世代のため、さらなる尽力を誓った。
華やかな舞に朗々たる謡でシテ方の第一人者として活躍し、復曲や新作能でも能の可能性をひらいてきた梅若実桜雪(うめわかみのるろうせつ)さん(76)。旭日中綬章の報に「後輩たちに影響を与える存在になれればうれしい」と喜びを語る。
祖父の二代目梅若実に能の楽しさを教わり、父の五十五世梅若六郎には謡を厳しく仕込まれた。「シテをよりよく見せるのが地謡。一人でこの能を背負うくらいの気持ちで謡えと、よく言われました」と振り返る。
「役者はわがままだから『これが自分の解釈だ』と言いたい思いがある」と言う。古典も新作も「恐れないこと」が信条で、「自分が恐れるようなものをお客さまに見せちゃいけない」と常に己を戒めてきた。
近年の能楽界は「能は難しい、というのを役者たちが押し付けている感じがする」と危惧する。「能って楽しいもの。お客さまにその世界を感じていただけるように、自然に演じることが大切だと思います」とほほ笑んだ。(田中佐和)