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雨の中、力強く進んだ山鉾 感謝と誇りの祇園祭後祭

産経ニュース 2024年7月24日 17時44分

祇園祭は24日、見せ場となる後祭(あとまつり)の山鉾(やまほこ)巡行が京都市中心部で行われた。伝統を重視する声の高まりを受け、前祭(さきまつり)と後祭の分離方式となって今年で10年。一時強い雨に見舞われながらも、11基の山鉾が都大路を力強く進んだ。

「にぎわい戻った」

この日は雨予報のため、多くの山鉾が懸装品(けそうひん)をビニールなどで覆い巡行をスタートさせた。鯉山はご神体の鯉を乗せずに巡行。正午ごろ、突然雷鳴が鳴り響くと雨が降り始め、ほどなくすると先が見えないくらいの土砂降りになった。しんがりの大船鉾は豪雨のため終着点の四条烏丸への到着が遅れた。大船鉾は今年、車輪を新調し話題を集めていた。

昭和40年まで実施されていた後祭の巡行は、交通渋滞緩和などの目的で翌年から前祭の巡行と一本化された。しかし巡行にかかる時間が長すぎることなどから、平成26年から分離巡行が復活した。

祇園祭山鉾連合会の木村幾次郎理事長(76)は「今年も無事に巡行を終えることができた。10年前はどうなることかと思ったが、大勢の人に見ていただき、後祭ににぎわいが戻ったことはよかった」と話した。

2年間徹底リサーチし「移住」

くじ取り式で「山一番」を引き当てた黒主山神事係の加藤晃久(てるひさ)さん(39)は、祇園祭に関わりたいと思い、8年前に京都市左京区から引っ越してきた。

高校時代、祇園祭は友人と一緒に露店巡りをした思い出しかない。東京の大学に進み、その後就職するなど約10年間、地元の京都を離れた。知人らが京都への憧れを口にするのを聞き、「京都の人間なのに京都のことを何も知らない」と気付いた。

京都に戻り、家業の漬物店を手伝うようになった。そこで出会う人たちは、楽しそうに祇園祭について語っていた。「自分も京都を代表する祭りに関わりたい」と強く思うようになった。

祇園祭に参加する山鉾町を2年かけて徹底的にリサーチ。マンションの住人でも積極的に巡行に関与できそうな黒主山に的を絞った。「新参者でも手伝えますか」と相談し、町内に溶け込めるように導いてくれたのが黒主山保存会の大田正樹顧問だった。

黒主山は今年、山本体の木部を新調。加藤さんは「新調した年に山一番を取って披露できるのはうれしい。祭りに携わるご縁をつないでいただいた町にお返ししたい」と目を輝かせた。

CFが最高額更新

祇園祭山鉾連合会(京都市下京区)が祭りの警備費用などに充てる資金集めのために実施していたクラウドファンディング(CF)で、計1715万5千円が集まったことが分かった。これまで最高だった令和5年のCF(計1593万5千円)を上回った。

同連合会によると、CFは5月21日~7月19日に実施し、計848人が支援した。山鉾巡行の辻回しを一望できる河原町御池のビルに設けた特等席での観覧と食事つきのプラン(15万円)が好評だったという。

連合会の山口敬一事務局長は「リピーターの人も多く、多数の支援に心から感謝します。引き続き先人が守ってきた祭りの文化を継承したい」と話した。(田中幸美)

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